私たちの意識はどこから生まれているのか?
私たちの意識は、何百万ものニューロンの同期的な活動によって維持されています。
脳の同期は、脳機能の異常や脳疾患にも関連しており、たとえばパーキンソン病では損傷を受けたニューロンの周りでは神経活動の同期が失われていることが知られています。
また私たちの意識をはじめとしたさまざまな認知機能も、神経活動の同期によって生成されていると考えられています。
しかし現在、そのような大規模な同期がどのようなメカニズムによって達成されているかは明らかになっていません。
新たな研究では、脳の神経線維には量子もつれ状態にある光子対を生成でき、この光の粒子たちが脳の同期において重要な役割を果たしている可能性が示されました。
近年の量子生物学の進歩により、生物の細胞内では、古典的な電気信号や化学反応だけでなく、量子的な現象が起こっていることが明らかになってきました。
たとえば光合成を担う植物の葉緑体の内部では、量子力学的な仕組みを使ってエネルギー生産の効率化が行われていることが明らかになっています。
同様の量子力学的な活動は、細菌や動物の細胞などでも発見されています。
このことは、地球の生態系が量子力学の仕組みによって支えられていることを示しています。
量子世界でみられる現象は直感に反し、日常世界と隔絶しているように思われていましたが、実際には生命活動に組み込まれ、命を構成する一要素にもなっていたわけです。
では、脳細胞ではどうなのでしょうか?
もし脳細胞が不思議な量子世界の仕組みを使っている場合、既存の仕組みのAIでは人間の脳機能の模倣において決定的な要素(量子システム)を欠いていることになるでしょう。
というのも既存の生成AIでは、脳細胞と電気信号を模倣した仕組みを採用していますが、その基礎原理は点と線を結ぶ古典物理学の範疇に留まっています。
具体的には仮想空間に細胞の代りとなる点(ノード)を設置し、学習を行うことで点と点の間の接続(エッジ)を最適化していくという過程を経ますが、この過程には量子力学的な要素は含まれていません。
そこで今回、研究者たちは、脳細胞において量子力学的な仕組みの発生源が存在するかどうかを調べることにしました。