ネコは「痛い」と言えない
飼い主であれば、飼い猫の気持ちを理解してあげたいと思うものです。
その点、ネコの好き嫌いは分かりやすく、関心の移ろいもはっきりと見て取れます。
一方で、ネコの痛みに関しては、部分的にしか理解してあげられません。
確かに、突発的な痛みや刺激でネコが声を上げて跳び上がることは、よくあるものです。
また体のどこかが悪くて、歩き方がおかしくなったり、元気が無くなったりすることもあります。
それでも、ネコが実際に感じている痛みがどれほどのレベルなのか、飼い主たちは知りません。
ネコは「痛い」と言えないのです。
しかし、成猫の4分の1は変形性関節症(肘・膝などの関節軟骨やその周辺組織が変性し、痛くなる病気)を患っており、その発生率は加齢とともに増加します。
飼い猫たちの多くが、このような慢性的な痛みを抱えていながら、人間のように言葉で伝えられず、適切な処置を受けられないままでいます。
またカステル氏らによると、「仮に変形性関節症の治療を行うとしても、治療の選択肢は限られており、その大部分では重大な副作用が伴う」ようです。
そこでカステル氏らは、アロマセラピーなど、ネコの痛みを和らげる代替手段を模索してきました。
ただし、これを確立する上で必要不可欠なのが、ネコが感じる痛みの評価です。
実際にどれほど痛みが和らいでいるか知ることができなければ、適切な緩和処置を生み出すことはできないのです。
では、どのようにしてネコが感じる痛みのレベルを知ることができるのでしょうか。
カステル氏らは、この痛みの評価に役立つのが、脳波検査だと考えています。
これは頭皮に電極を当てて脳の電気活動を記録する検査のことであり、ネコの頭を傷つけたり、身体に影響を与えたりしません。
ただし、ネコたちは脳波検査を受ける人間のようにおとなしくしていられません。
猫たちは頻繁に頭を振ったり動いたりするため、電極がズレたり落ちたりするのです。
そこでカステル氏らは今回、可愛らしいネコ用脳波測定装置を開発することにしました。