異性を見た時にだけ、瞬間的に生殖ホルモンの分泌が低下する
研究者たちはまず、オスのウズラを実験用のケージに入れ、ガラス板越しに他のウズラを見せたあとで、オスの脳組織と血液を回収して、生殖に関わる物質がどのように変化するのかを調べました。
その結果、60分間メスを見たオスの脳組織では、ゴナトトロピン放出ホルモン阻害ホルモン(GnIH: 性腺刺激ホルモン阻害ホルモン)という脳の遺伝子が増えていることが分かりました。
ゴナトトロピン放出ホルモン阻害ホルモンは、脳の視床下部という場所で作られる神経ペプチドで、生物の攻撃性を抑制する働きがあります。
さらに、ゴナトトロピン放出ホルモン阻害ホルモンは、脳の下垂体から分泌される、生殖に関わるホルモンである黄体形成ホルモンの分泌を抑えて、生殖行動を抑制する作用も持っています。
つまり、オスのウズラは認識した相手がメスだった場合、攻撃性と生殖行動を一時的に抑制して、相手とコミニュケーションを取ろうとしていると考えられます。
この反応は、オスのウズラが単独でケージに入れられている時や、他のオスを見た時には観察されませんでした。
一目見た相手に対して、優しくしたい、コミニュケーションを取りたい、という欲求を感じるのは、まさに瞬間的に恋に落ちる「一目惚れ」という現象そのものですね。
一目惚れは起こりうる
すべての生物は、他者とコミュニケーションを取りながら生活をしています。
一方で、コミュニケーションと感情的な行動の関係性には、わかっていないことがたくさんあります。
本研究は、異性を認識した時に生じる、生物の本能的な行動のメカニズムの一部を明らかにしました。
ゴナトトロピン放出ホルモン阻害ホルモンや黄体形成ホルモンは、ヒトをはじめとした多くの野生動物に共通して存在しています。
異性を前にした時に、優しくしたい、仲良くなりたいと感じるのは、このような本能的な働きが、身体の中で起きている可能性があります。
野生動物のメスも、オラオラ系より優しい男の方が好み!ということかもしれませんね。
ヒトの「一目惚れ」には多くの要因が絡んでおり、より複雑ではありますが、基本的な構造はウズラと同じであると考えられます。
このことから、ヒトでも「一目惚れ」は起こりうる現象であり、生きていく上でのコミュニケーション行動のひとつと言えるのではないでしょうか。