日本で唯一「子育て」をするカエル
アイフィンガーガエル(学名:Kurixalus eiffingeri)は石垣島や西表島、台湾に生息するアオガエル科の一種です。
彼らは日本に生息する種の中では唯一「子育て」をするカエルとして知られています。
オスとメスがつがいを形成すると、彼らは魚類や甲殻類などの天敵の脅威から子供たちを遠ざけておくため、樹上の木の洞や切り株にできた小さな水場に産卵します。
父親の方は卵を監視して乾燥や天敵から守り、母親の方は自らの無精卵をエサとして生まれてきた子供たちに与えるのです。
オタマジャクシたちは小さな水場の中で、母親の無精卵だけを食べて大きくなっていきます。
ところが、この特殊な生息環境ならではの切実な理由があるのです。
狭すぎてウンチしたら死ぬ⁈
オタマジャクシが幼生期を過ごす水場はとても小さく、閉鎖的な環境となっています。
その中に何十匹もの兄弟がギュウ詰めになって暮らしているわけですから、全員がウンチをしてしまうとどうなるでしょう?
ウンチには有害なアンモニアが含まれており、木の洞や切り株の少ない水ではアンモニア濃度を安全なレベルまで薄めることができないのです。
つまり、全員がいっせいに水場にウンチをしてしまったら、アンモニア濃度が異常に高くなって、オタマジャクシたちは死んでしまうと考えられます。
そこでアイフィンガーガエルのオタマジャクシが取った戦略は「ウンチをしない」ことでした。
研究チームは飼育を通した追跡観察から、本種のオタマジャクシが大きく成長するまで固形の便を排泄しないことを確認しました。
その代わりに、オタマジャクシたちは外に出せないウンチを腸内いっぱいに溜め込んでいることがわかったのです(上図を参照)。
これを受けてチームは「本種のオタマジャクシがウンチをせず、アンモニアの排出量を減らすことで、小さく閉鎖された水場における汚染を避け、生存に有利な独自の衛生戦略を獲得しているのではないか」との仮説を立て、調査を行いました。