小さな水場で生き抜く2つの戦略が判明!
チームはまず、アイフィンガーガエルのオタマジャクシがどれほどの量のアンモニアを環境中に排出しているかを調べてみました。
実験では、本種の他にニホンアマガエル・ヤマアカガエル ・モリアオガエルの3種のオタマジャクシを用意し、同じ体積(20ml)の蒸留水の中で飼育。
時間が経つにつれて、水中のアンモニア濃度がどう変化していくかを測定しました。
その結果、他の3種に比べて、アイフィンガーガエルは環境中に排出しているアンモニア量が大幅に少ないことがわかったのです。
次に、腸内のウンチに含まれているアンモニア濃度に注目。
オタマジャクシのウンチを解剖によって腸内から取り出し、アンモニア濃度を測定しました。
すると今度はアイフィンガーガエルだけが他の3種に比べて、ウンチ中のアンモニア濃度が高レベルで蓄積されていたのです。
このことからアイフィンガーガエルはアンモニアを多量に含んだウンチを腸内に溜め込み、体外には排出していないことがわかりました。
アンモニア耐性が強い!
さらにチームは、それぞれのオタマジャクシが環境中のアンモニア濃度にどれほどの耐性を持っているかも調べてみました。
この実験では、アイフィンガーガエルとニホンアマガエルの幼生を様々な濃度の塩化アンモニウム水溶液の中で飼育し、生存率を比較。
その結果、アイフィンガーガエルはニホンアマガエルが生存できないアンモニア濃度でもほとんど死亡することがなかったのです。
このアンモニア耐性の高さが、体内にウンチを溜め込んでも死なない要因の一つかもしれません。
それほどアンモニア耐性が強いなら、水場にウンチしても大丈夫なのではないでしょうか?
しかしそういうわけにはいきません。
自分だけのウンチを体内に溜めておくなら十分に耐えられますが、狭い水場に兄弟みんながウンチすると、水中のアンモニア濃度はとんでもない高さにまで跳ね上がります。
先の実験では、アイフィンガーガエルもあまりに高濃度のアンモニアにさらされると死亡していることから、「みんなで外にウンチするのは禁止しよう」と本能的に決めているのでしょうね。
まとめ
以上の結果をまとめると、アイフィンガーガエルのオタマジャクシは小さくて狭い水場に対し、
・ウンチをしないことでアンモニアの排出量を抑える
・アンモニア自体への耐性を強める
という2つの生存戦略によって、幼生期の生存率を高めていると結論されました。
その後、アイフィンガーガエルは大人と同じ姿にまで成長した直後に初めてウンチをします。
「ウンチしたら死ぬ」とはあまりに絶望的な運命ですが、生命は閉鎖的で小さな環境を生き抜くために、私たちではあり得ないユニークな衛生戦略を編み出していたようです。