DNA判定により、「フィッツジェームズ船長の人肉は隊員たちに食べられていた」と判明
フランクリン遠征隊の隊員たちは、氷に閉じ込められた船を後にし、北極圏からの脱出を試みました。
しかし最終的には129人すべてがその努力もむなしく、亡くなってしまいました。
キングウィリアム島で見つかった数々の遺品は、隊員たちが、島にたどり着いたものの、そこから離れて帰国することがかなわなかったことを示唆しています。
今回、スタントン氏ら研究チームは、フランクリン遠征隊の子孫や親戚を追跡し、彼らのDNAを調査しました。
そしてそれらの情報を、キングウィリアム島で発見された遺骨のDNAと比較し、身元確認を行いました。
その結果、これまでに回収された400の骨のうち、1つの顎骨から採取したDNAが一致。
それがエレバス号の船長、ジェームズ・フィッツジェームズのものだと判明したのです。
そしてフィッツジェームズのものだと考えられる顎骨には、人為的に加えられた切り傷が残っていました。
研究チームによると、「これはおそらく飢えや病気に苦しんでいた隊員が、フィッツジェームズ船長の死体を食料として食べたことを示唆している」ようです。
これは当時の報告とも一致しています。
1850年代のイギリスの探検隊は、キングウィリアム島のイヌイット住民から、フランクリン遠征隊の隊員の遺体に「人食いの痕跡が見られる」との報告を受けたのです。
また1990年代に行われた調査でも、遺跡から発見された4人の骨に人肉食の痕跡が見られました。
このことは、何とか生き残った隊員たちの悲惨な状況を明らかにしています。
遭難した彼らは十分な食料を得ることができず、飢えや病気に苦しんでおり、生きるための最後の手段として人肉食を行うしかなかったのです。
先に亡くなったフィッツジェームズ船長の肉をそぎ、食べなければいけなかった隊員たちの心情を考えると、彼らがどれほど悲惨で絶望的な日々を送らなければいけなかったかがよくわかります。
今回の研究により、フィッツジェームズ船長が、フランクリン遠征隊による人肉食の犠牲者であることが初めて明らかになりました。
回収された彼の骨は、他の犠牲者と共に埋葬され、死亡現場には記念碑が建てられました。
またスタントン氏と彼の同僚は、フランクリン遠征隊の子孫が他にもいないか探しており、残りの遺体の身元確認を行いたいと考えています。