命を模倣する「ブラストイド」
近年の急速な技術進歩により、幹細胞からさまざまな種類の臓器のレプリカを作れるようになってきました。
幹細胞とはさまざまな種類の細胞に変化できる多能性を持った細胞であり、適切な刺激を与えることで神経、筋肉、皮膚などに変化させることが可能です。
たとえば以前に行われた研究では、幹細胞をもとに人工培養脳(脳オルガノイド)を作成し、さらに化合物で刺激を行うことで脳に目をはやすことに成功しています。
また近年の研究では、幹細胞から精子や卵子を作る試みが続けられており、マウスを使った研究ではオスマウスの皮膚細胞を幹細胞を経て卵子に変化させ、さらに精子と受精させて受精卵を作り、健康な子マウスを出産することにも成功しています。
また幹細胞の持つ万能性を極限まで引き出すことで、幹細胞を胚に似た存在にダイレクトに変化させることも可能になってきました。
上の図は「ブラストイド」と言われる人工合成胚を作る2種類の方法を示しています。
上の方法では幹細胞の状態を経由する形で、下の方法では大人の細胞をリプログラムすることでブラストイドが生成されます。
ブラストイドは自然な胚と違い倫理的な問題をある程度回避できるという利点があり、胚が成長していく仕組みを解き明かすための重要な材料と考えられています。
マックスプランク研究所で行われた研究では、このブラストイドを使用して、人間の胚に命の停止ボタンが存在するかを調べる試みが行われました。