スライムはドラクエ世界の成功者
ドラクエ世界を彩る無数の生物たちの中で、ひときわ目立つのは「スライム系」の多様なラインナップです。
青いスライムをはじめ、赤いスライムベス、ぶちスライム、メタルスライム、ホイミスライム、さらには貝殻をまとったマリンスライムまで、環境も生態も異なる多種多様なスライムが存在します。
こうした豊富なバリエーションは、強力なモンスターや華やかなドラゴンたちに隠れがちな存在ながら、実はスライムが「生物学的成功者」であることを示唆しています。
人気モンスターであるスライムはドラクエの続編が出るたびに新たな種が追加されてきたという大人の事情があるからでしょう。
しかしこれを純粋な生物学の観点からみると、スライムは成功した生物であることがわかります。
生物学の分野では多様な分岐を果たし、広い生息範囲を持ち、個体数の多いものは、成功した系統としてみなされています。
たとえば動物のネコ科や植物のラン科がいい例です。
動物の世界のネコ科も40種類が存在し、サイズも小型から大型まで多様であり、森林、草原、砂漠など多様な生態系に生息しています。
またラン科に至っては2万8000種以上が知られており、世界中の多様な環境、それこそ熱帯雨林から高山帯までさまざまな地域に生息しています。
さらに花の形態や受粉戦略も多様であり、多くの昆虫や鳥類たちとの共進化を果たしています。
ドラクエの各所に多様なスライムが生息しているという事実は、スライムがこの世界において生物学的な成功者であることを示しています。
ドラクエ世界で最弱とされるスライムが成功した種であると言うと疑問に思う人もいるでしょう。
しかし現実の世界でも強い種だからといって繁栄している種とは限りません。
巨大で力強いマンモス、巨大な牙を持ち初期人類を捕食していたサーベルタイガー、身長数メートルにもなるギガントピテクス、そして恐竜。
現実世界に存在した人間よりも確実に強い種の多くは、絶滅してしまいました。
一方で、スズメやウスバカゲロウといった非力な種が生き残っています。
もしかしたらスライムには、見た目以上の適応力があるのかもしれません。
だとすれば現実世界で保護の必要性が唱えられているパンダやコアラと生存競争をした場合、スライムのほうが勝ってしまうでしょう。
次は現実世界にいる生命と比較し、スライムがどんな進化を遂げてきたかを考察していきます。