人と人のコミュニケーションに介入するAI
交際したり結婚したりする2人は、お互いに「心が惹かれた瞬間」「好きになった瞬間」を覚えているものです。
例えば、お互いに笑顔になった瞬間を、心が通じ合った時だと感じたかもしれません。
誰かに誘導されたわけでも、強制されたわけでもありません。
お互いが「自分でそう思った」のです。
しかし最近では、相手と直接会うだけでなく、ビデオチャットを使ってリモートで会話することが増えました。
そして、それらのアプリの中には、少しでも印象を良くするようにAIを用いた顔フィルターが導入されています。
自分と相手の間に「AI」が存在し、介入しているのです。
ただし、私たちの多くは既にAIに加工された顔を見慣れており、大抵の場合、フィルターが掛かった顔を見抜きます。
目が大きくあごが細い「同じような顔」や、フィルター特有の微妙な違和感にうんざりする人が少なくありません。
現状の顔加工技術は驚くほど進化しているものの、原型から顔をいじりすぎていて、直接会えばすぐ加工していたことがバレるようなものがほとんどです。
そのため多くの人は、ビデオチャットに介入するAIの存在を軽視しています。
しかしその認識は危険です。
最近、グラスゴー大学の研究チームが開発したAI顔フィルターは、「ユーザーの笑顔を僅かに増減する」という控えめなものですが、それでも、このフィルターを使用する人々の心に大きな変化を及ぼすことができたのです。