徐々に明らかになっている全身麻酔のメカニズム
全身麻酔の歴史は19世紀に遡ります。
西洋で初めて全身麻酔による手術が行われたのは1846年のことでした。
それまで手術とは苦痛を伴う大変危険なものであり、その痛みとリスクの大きさから、緊急の場合にのみ行われることが多かったようです。
そのことを考えると、「気づいたら手術が終わっている」なんてことを可能にする現代の全身麻酔は、今やなくてはならない存在です。
しかし、よく知られていることですが、全身麻酔が最初に行われて180年近く経った現代でも、麻酔によって人が意識を失うメカニズムは完全には解明されていません。
もちろん、全く見当がついていないわけではなく、現在に至るまで1つ1つ証拠を集めるかのように、徐々に理解が深まってきています。
そして理解を深めるべき全身麻酔の分野の1つに、「麻酔薬に対する感受性の性差」があります。
例えば初期の研究では、「男性と女性は麻酔薬に対して同等の感受性がある」と報告されていました。
しかし、アメリカのウィスコンシン大学(Universities of Wisconsin)による2022年の研究では、「手術中に意識を戻す可能性は、男性と比べて女性の方が約3倍高い」と報告されており、議論の余地があります。
そこで今回、アメリカのペンシルベニア大学(Penn)に所属するアンジェイ・Z・ワシルチュク氏ら研究チームは、マウスと人間を対象に、麻酔薬の感受性に対する性差を調査することにしました。