男性ホルモン「テストステロン」が麻酔感受性の性差を生じさせる
マウスでも人間と同様の実験が行われた結果、メスのマウスがオスのマウスよりも早く意識と認知力を取り戻すと分かりました。
同じ濃度の麻酔薬の投与に対し、メスのマウスの方が抵抗性が高いことが確認されたのです。
そしてマウスを使ったさらなる実験では、男性ホルモン「テストステロン」が麻酔薬の感受性に関係していると判明しました。
例えば、オスのマウスで去勢(テストステロンの減少)を行うと、麻酔薬への抵抗性が増加し、より早く意識と認知力を取り戻すようになりました。
去勢したオスとメスでは、麻酔薬に対する感受性の性差がなくなったのです。
また、テストステロンを投与することでも、麻酔薬に対する感受性が高まり、意識と認知力の回復が遅くなることが示されました。
男性ホルモンのテストステロンは、アロマターゼという酵素によって脂肪組織で女性ホルモンのエストラジオールに変換されますが、今回の研究では、このプロセスの一部が、オス(男性)の麻酔感受性と関係していることが明らかになりました。
しかし、脳波検査の結果には、これらの性差が反映されず、研究チームは、「従来の脳波検査よりもさらに精密な検査方法を開発する必要がある」と考えています。
今回の研究では、人間やマウスにおいて、女性(メス)の方が、男性(オス)よりも、全身麻酔への抵抗性が高く、意識と認知力を早く回復すると判明しました。
また、その性差には男性ホルモン「テストステロン」が関係していることも分かりました。
「手術中に意識を取り戻す」という悲劇をできるだけなくすためにも、今回の発見は大いに役立つことでしょう。
全身麻酔に対する私たちの理解は、さらに一歩進みました。