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Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部
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本能が恐怖を感じる仕組み「イモリをヘビ柄にすると生物は脅威を感じる」

2024.12.05 17:00:38 Thursday

人混みの中にあっても「怖そうな人」にはすぐ気づけることがよくあります。

そんなとき、皆さんは何を目印に怖そうな人を見分けているでしょうか?

おそらく、いかついサングラスやタトゥー、奇抜な髪色、咥えタバコなどでしょう。

このように私たちは何らかの目印をヒントに「脅威の対象」を即座に検出できる本能があります。

そして名古屋大学の最新研究によると、ヘビの脅威の目印はぬるっとした見た目でも、うねうねした動きでもなく、ヘビのウロコ皮であることが明らかになりました。

サルを対象にした実験では、ヘビとイモリの写真を同時に見せるとヘビの方が早く見つけられましたが、イモリにヘビ皮を着せてみると、ヘビと同等かそれ以上に早く見つけられるようになったのです。

その興味深い実験の様子を見てみましょう。

研究の詳細は2024年11月10日付で科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されています。

ヘビの怖さはウロコのせい!? ~ヘビのウロコを着たイモリは、ヘビと同じかそれより早く見つかる~ https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2024/11/post-751.html
Japanese monkeys rapidly noticed snake-scale cladded salamanders, similar to detecting snakes https://doi.org/10.1038/s41598-024-78595-w

「ヘビが怖い」は生まれつき備わった本能

弱肉強食の自然界を生き残るためには、脅威となる対象をすぐに見つけられる能力が不可欠です。

そのため、野生生物たちは自分たちにとって危険な相手を即座に検出できるようになりました。

その能力は私たちヒトにも受け継がれています。

人類は高度な都市社会を築く中で、天敵とほとんど遭遇しない環境を作り上げてきましたが、それでも尚、世界各地では野生生物による死傷者が続出しています。

中でも危険な動物のひとつがヘビです。

ヘビは蚊や寄生虫、そしてヒトを除けば、最も多くの人命を奪っている生物の一種であり、WHO(世界保健機関)によると、ヘビに噛まれたことが原因で死亡する人は毎年8.1万〜13.8万人いるという(WHO report)。

そのため、ヘビは間違いなく私たちにとって脅威の対象となっています。

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ヘビはヒトにとって脅威の存在/ Credit: canva

それは霊長類の仲間であるサルにとっても同じことです。

サルの祖先は恐竜亡き後の約6500万年前から樹上での生活を始め、地上を闊歩する大型の捕食者から安全に暮らすことができました。

しかしその中にあって唯一、樹上のサルの祖先を狙うことができたのがヘビでした。

それ以来、長きにわたるヘビの恐怖は霊長類の祖先のうちにしっかりと植え付けられ、それが現在のサルやヒトにも受け継がれていると考えられています。

実際、これまでの研究でも、本物のヘビを見たことのないサルは他の動物の写真よりもヘビの写真をいち早く見つけることができ、生後6〜11カ月のヒトの赤ちゃんもヘビの写真を見せられると顕著な脳波を示すことがわかっているのです。

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ヘビのどこを見て「怖い」と感じるのか/ Credit: canva

つまり、サルとヒトは大人たちからヘビの怖さを教わったり、ヘビに噛まれた経験からヘビを脅威と認識するのではなく、遺伝的に「ヘビが怖い」と感じる本能を生まれつき持っているのです。

ところがその一方で、サルやヒトが具体的にヘビのどこを目印に脅威と感じているのかは不明でした。

ヘビに特有のぬるっとした姿形なのか、うねうねした動きなのか、はたまたヘビのウロコなのか。

過去のいくつかの研究は「ウロコを脅威の手がかりにしている」ことが示唆されていますが、確かな証拠はありません。

そこで研究チームは今回、飼育下にあるサルを対象に実験を行うことにしました。

次ページイモリにヘビ皮を着せると「脅威」と認識された⁈

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