イモリにヘビ皮を着せると「脅威」と認識された⁈
この研究では、本物のヘビを見たことがない3頭のサル「シバ・ウメ・ペロ」に協力してもらいました。
3頭には用意した9枚の動物写真から1枚だけ異なる写真を選ばせて、その検出にかかった時間を測定します。
まず第一の実験では、8枚のイモリの写真の中に混ぜた1枚のヘビを選ぶ条件と、8枚のヘビの写真に混ぜた1枚のイモリの写真を選ぶ条件を実施し、ヘビとイモリのどちらを先に見つけ出せるかを調べています。
その結果、3頭とも圧倒的にヘビを見つける方が早いことが確認できました。
これは3頭のサルが「ヘビ=脅威」であることを本能的に理解していることを示し、過去の研究結果とも一致します。
そこで第二の実験では、イモリの写真に「ヘビのウロコ皮」を合成写真として貼り付けて、先と同様の実験を行いました。
その結果、シバとウメはヘビと同等の時間でウロコ皮イモリを検出するようになり、ペロに関してはヘビよりも短時間でウロコ皮イモリを見つけられるようになったのです。
これは3頭のサルがヘビを検出する際の脅威マーカーとして「ウロコ皮」に敏感に反応していることを示すものでした。
今までは何の脅威でもなかったはずのイモリが、ヘビ皮を着せただけで急に脅威の存在に変わったと見られます。
この結果はまだヒトでは確認されていませんが、私たちでも同様の反応を示す可能性が十分にあります。
この結果を受けて研究者は、今年10月28日に惜しくも亡くなられた日本漫画界の巨匠・楳図かずお氏の作品に触れて、次のような面白い見解を述べています。
「ホラーマンガの巨匠、楳図かずおさんの代表作の一つに「へび女」という作品があります。
そのなかの「ママがこわい」という話の冒頭で、主人公の少女は入院している母から「病院にはへび女がいる」という話を聞きます。
母親はへび女のことを「からだじゅうウロコがはえていて、口が耳もとまでさけて、すごい顔をしているそうよ」と説明します。
単行本の目次ページの背景には一面、ヘビのウロコが描かれています。
楳図さんは、わたしたちがヘビのウロコを怖れるということを無意識のうちに気付いていたのかもしれません」
このように私たちはヘビのウロコ皮を脅威の目印にしているようですが、逆にこの知見は私生活に活かせるヒントとなるのではないでしょうか。
例えば、ヘビ柄の服を身につけていれば、街中でも友人にすぐ気づいてもらえたり、愛犬にヘビ柄を着せた写真をSNSにアップすれば、スクロールの中でも人の目にパッと留まりやすくなるかもしれません。
まあ、目に留まったはいいものの「何してんだ、この人は?」と気味悪がられるかもしれませんが…