咬み傷から性行為が盛んになるシーズンを特定!
本調査では、2005年から2020年にかけてノースカロライナ沖で撮影された686頭のシロワニの画像、計2876枚を分析しました。
これらの画像は研究者だけでなく、ダイバーやアマチュアの写真家によって撮影された膨大なサメ画像を保存するデータベース「Spot A Shark USA」から入手しています。
チームはこの画像を用いて、シロワニの部位ごとの咬み傷の発生率や重症度、原因などを分析。
その結果、交尾行動による噛みつきが野生下でも頻繁に起こっていることが確認できました。
しかも噛み付くのは常にオスだけでなく、メスの方も頻繁に噛みつき返していたことがわかっています。
さらにその傷跡は甘噛みなんて生やさしいものではなく、完全に肉が抉(えぐ)り取られた重症のものが多く見られたのです。
ただチームはこれと別に、シロワニの咬み傷を調べることで交尾行動がいつ盛んになるかを特定できることを明らかにしました。
チームは水族館で観察されたシロワニの咬み傷の発生〜治癒までを追跡観察し、咬み傷を以下の4段階のステージに分けています。
・ステージ1:噛みつかれたばかりの新鮮な深い傷
・ステージ2:噛みつかれてから2週間以内で、治癒が始まり出した傷
・ステージ3:噛みつかれてから3〜6週間以内で、傷が閉じ始めて跡になる段階
・ステージ4:噛みつかれてから6週間以上が経過しており、傷跡が消失し始めている段階
その結果、メスにおけるステージ1の咬み傷は5月下旬から急増し、7月にピークを迎えることがわかりました。
これはノースカロライナ沖では、5〜7月の時期がシロワニの主要な交尾シーズンであることを示しています。
そして7月の終わりまでにはステージ2の傷も見られなくなり、ステージ3・4の治癒中の傷跡が多く観察されました。
一方でオスの咬み傷も5〜6月中にピークを迎えており、積極的な交尾行動の中でメスに噛みつき返される頻度も多くなっていると考えられます。
また今回の研究からは、サメの傷口の治癒速度が異常に速いこともわかりました。
サメは皮膚を抉られて奥の筋肉組織が露出するほどの重傷を負っても、わずか22日前後で傷口は塞がり、85日後には傷跡がほとんど消失するまでに回復していたのです。
このような非常に高い治癒力があるおかげで、激しい性生活も可能になっているのでしょう。
もし人間が同じことをすれば、性行為による死人が続出してしまいますね。