メダカのオスは「1日に最大27回」産卵行動できる
研究チームは、メダカのオスが1日に何度も産卵行動を行い、メスは1日に1回しか産卵しないという特徴を生かし、ある実験を行いました。
オスとメスを1匹ずつ同じ水槽に入れ、ビデオカメラで撮影。
そのペアが産卵行動を終えると、オスだけを別のメスがいる水槽に移し、再び産卵行動を撮影します。
これを繰り返すことで、オスが1日に何回産卵行動するのか数えたのです。
ちなみに、ペアが組まれてから20分経っても産卵行動が見られないと、そこで実験は終了します。
そして各ペアの産卵行動が終わるたびに、メスのお腹にぶら下がっている卵をすべて集め、受精率、放精数、オスとメスの行動を分析しました。
その結果、オスの産卵行動は、1日平均19回だと分かりました。
ちなみに、最多は27回、最少は4回でした。
メダカのオスの性行為の回数は、人間や他の動物と比べて非常に多いのです。
また、メスの産卵数は平均12個、オスから放出される精子の平均数は数万~十数万個でした。
それでも、放精数は産卵行動の回数を重ねるたびに劇的に減少していきました。
実際、最初の産卵行動では平均4万6388個の精子を放出していましたが、最後の産卵行動では、平均2775個(最初の0.5~6.3%)にまで減っていました。
1日の総放精数の50%以上が、開始3回の産卵行動で消費されていたのです。
さらに、このような放精数の減少は、卵の受精率を大きく低下させることも分かりました。
開始数回の産卵行動では受精率がほぼ100%でしたが、10回目以降はそうではなく、受精率が0%の場合もあったのです。
加えて、産卵行動の回数を重ねるごとに、オスがメスを追いかける行動(求愛行動)の時間や回数も減少しました。
一方で、メスは1日1回しか産卵しないにも関わらず、精子が枯渇したオスと産卵行動をした場合でも産卵数を減らさず、産卵可能な卵を全て放出していました。
つまり、オスの精子が枯渇していたとしても、メスは産卵行動を拒否したり、産卵数を調整したりしないのです。
こうした傾向は、オスの精子が有限で、貴重なメスの卵が無駄になりやすいこと示しています。
もちろん、自然環境ではエサや配偶者を見つける点で制約があるため、実際の産卵回数はもっと少なくなるはずです。
オスとメスの個体数によっても大きな違いが生じるでしょう。
それでも今回の研究は、「精子が有限である」というこれまで見過ごされがちだった視点を提供しました。
他の動物と比べて、メダカは確かに「絶倫」と言えるかもしれません。
それでも精子の数には限界があるため、何回も射精できても繁殖においてはあまり意味がないようです。
そう考えると、なぜ27回も頑張るメダカがいるのか謎が深まります。