天使の羽より「コウモリの翼」が向いている?
人間は多くの素晴らしいことができますが、自力で空を飛ぶことはできません。
でも、もしそれが可能なら、翼はどれくらいの大きさで、どんな形がベストなのでしょう?
まず大きさについてですが、その答えは個々人の体格によって異なります。
例えば、米ノースカロライナ大学チャペルヒル校(UNC-Chapel Hill)の生物学教授タイ・ヘドリック(Ty Hedrick)氏によると、体重が約70キログラムで身長が少なくとも1.5メートルある人なら、翼幅は約6メートル必要になると話しています。
これは鳥の体重と翼幅の比率を調べた先行研究(Journal of Avian Biology, 2007:PDF)をもとに、人間の体重であればどれくらいの翼幅が必要になるかを試算するために開発した方程式から弾き出したものです。
しかし人間の体のつくりを考慮するなら、単に鳥の翼を取り付ければいいというわけではありません。
飛ぶためには、翼だけでなく他の特徴も必要になるからです。
神話やファンタジーでよく想定されているのは、鳥の羽毛で覆われたいわゆる”天使の羽”型のものでしょう。
この翼は人間の背中から突き出るようにして生えています。
ただ研究者によれば、人間が天使の翼を生やすには今よりずっと大きな肩甲骨が必要になりますし、さらには翼をバサバサと動かすための飛行筋が新たに必要になり、それは背中から胸部にかけて巻き付くような構造になるので、胸筋がとんでもなく大きくなるといいます。
そのような体はもはや地上での生活に不向きであり、人間にとって天使の翼は最適ではないと考えられます。
そこで研究者らは「科学的なメカニズムを考えれば、人間には天使の羽よりもコウモリのような翼が向いている」と指摘します。
コウモリの翼は鳥や天使の羽毛とは違い、飛膜と呼ばれる伸縮性の高い膜でできています。
これが手の先から尾部にかけて繋がっており、まさにマントを広げる形でパタパタと飛行します。
飛膜は羽毛型の翼よりずっと軽量なので、ハト胸のように過剰な筋力をつけないで済みます。
ただコウモリの翼をつける場合、人間の両手はかなり長く伸びて、飛膜の面積を大きくしなければなりません。
それから地上で生活するときも、常に脇の下にヒダヒダをぶら下げておかなければならないでしょう。
しかしコウモリの翼を付けたとしても、上空でバサバサと翼をはためかせたいのなら、結局は大きな胸筋が必要になってしまいます。
そこで地上でも生活も続けながら人間が飛行能力を得るとしたら、最もベストな飛び方は「滑空」になるといいます。