あなたはどっち?流される人と流されない人の違い
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アッシュの実験とその後の研究によると、人が同調する理由には大きく三つのパターンがあるとされています。
一つ目は、「周りと違うのが怖い」と感じるタイプ。これは規範的影響(Normative Influence)と呼ばれます。
たとえば、みんなが「この映画は最高!」と言っていると、本当は微妙だと思っていても「自分だけ違う意見を言ったら浮くかも…」と不安になり、つい「うん、面白かったよね」と合わせてしまう。こうした“空気を読む”心理が、規範的影響の典型例です。
二つ目は、「もしかして自分が間違ってる?」と不安になるタイプ。これは情報的影響(Informational Influence)と呼ばれます。
たとえば、新しいスマホを買おうとして口コミをチェックしたら、最初は「A社のモデルがいい」と思っていたのに、多くのレビューが「B社のほうが圧倒的に優れている」と評価しているのを見て、「あれ、もしかしてB社のほうが正解なのか?」と考えが揺らぐ。こんなふうに、他人の意見を頼りにしすぎることで、知らないうちに流されてしまうのです。
三つ目は、「本当の答えを知っているけど、あえて間違った答えを選ぶ」というタイプ。これは行動の歪み(Distortion of Action)と呼ばれる現象です。
たとえば、職場の会議で上司が「この企画、完璧だよね?」と言ったとき、本当は「明確な問題点」に気づいていても、周りの同僚が全員うなずいているので、「ここで異論を唱えたら立場が悪くなるかも」と考え、あえて「そうですね」と同調する。規範的影響と似ていますが、こちらは本人が「本当の答え」を知っているにもかかわらず、場の空気を乱さないために誤った選択をする点が異なります。
こうしたパターンはいずれも多くの人には心当たりのあるシチュエーションではないでしょうか。
SNSでは特定の考えに多くの人が同調して、トレンドになったり炎上したりというパターンが良く見られますが、この原因にもここで示された同調のパターンが関連していると考えられます。
SNSユーザーの動向を調査した研究は、最近増えてきていますが、そこでも話題になった意見への同調の傾向が高まることが報告されています。
SNSは便利なツールですが、無意識のうちに私たちの思考を形作る「同調の場」にもなっています。
では、私たちはどうすればSNSを含め同調圧力に負けず、自分の意見を保てるのでしょうか?
“自分の意見”を守るために
アッシュの実験では、流されなかった被験者と、流されやすかった被験者には顕著な違いがあったと報告されています。
流されなかった人々は、自分の意見に確信を持ち、論理的思考を重視する傾向がありました。一方で、流されやすい人々は、不安を感じやすく、判断に自信が持てない傾向があったのです。
こうした特性はおそらく、本人が一番自覚している問題でしょう。
SNSでは、特に情報が短時間で大量に流れるため、判断に迷いやすい人ほど影響を受けやすくなります。もし、自分が意見を持つことに不安を感じやすいと自覚しているなら、より慎重に情報を吟味し、冷静に考える習慣を持つことが重要です。
わかりやすい意見や、大勢が盛り上がっている意見にすぐ飛びつかないよう注意しましょう。
「自分の意見は本当に自分のものなのか?」
この問いを常に持ち続けることで、情報に流されることなく、自分の考えを大切にできるのではないでしょうか。
あなたは、今後どのように情報と向き合いますか?