進化したバイオハイブリッドドローンは探索範囲が2倍以上に
最新の研究で開発されたバイオハイブリッドドローンも、生きたカイコガの触角をセンサーとして利用しています。
今回の研究では、特に2つの改良が加えられました。

まず、「触角を覆う専用カバー」を開発しました。
カイコガは、羽ばたきによって気流をコントロールし、匂いが含まれる気流を自身の触角に選択的に誘導します。
一方でドローンは、プロペラ飛行による対称的な流れが発生するため、匂いの方向を判断するのは簡単ではありません。
そこで、専用カバーが役立ちます。
これを装着することにより、ドローンが飛行中に受ける気流の影響を抑え、匂いの方向をより正確に検出できるようになりました。

次に、「戦略的に動きを停止する探索アルゴリズム」を採用しました。
昆虫は、匂いを探す際に動き続けることはなく、「停止」することが分かっています。
ロボットによる探索では、このポイントが見落とされがちでした。
そこで新しいドローンには、自然界で観察される昆虫の動きをヒントに、一時停止(ホバリング)しながら回転する動作と、一定距離を直進する動作を交互に繰り返すアルゴリズムを開発・導入しました。
回転中にスキャンした匂い情報(匂いセンサの値とドローンの角度)を計算することで、匂い源の方向を推定して、その方向に直進するのです。

そして、このように進化したバイオハイブリッドドローンは、探索範囲が従来の2mから5mへと飛躍的に向上しました。
この結果は、小型ドローンによる匂い探索の世界記録です。
この技術が発展すれば、災害救助だけでなく、ガス漏れの検知や麻薬・爆発物の探索など、幅広い応用が可能になるでしょう。
しかし、実用化にはまだ課題も残されています。
例えば、触角の耐久性が低いため、長期間の使用には工夫が必要です。
今後、これらの課題を克服し、実用化が進めば、匂いを頼りに空を飛ぶレスキュードローンが活躍することになるかもしれません。