人はアンドロイドの心を見ようとするのか
人間同士のコミュニケーションにおいて、目は非常に重要な役割を果たします。
好きな人にじっと見つめられるとそれだけで嬉しくなります。
一方で、面接官にじっと見つめられると一層緊張するものです。
また私たちは、相手の視線を追跡して(注意シフトという)、相手が何を見ているのか、何に興味や関心を持っているのか把握しています。
デートの最中、恋人が自分以外の異性に視線を移すなら、「自分よりもあの人の方が魅力的に感じるのか」などと考えてしまい、イライラしたり不安になったりするものです。
このような心情の変化は、相手の視線を追跡することが、単に視覚的な情報の変化を読み取っているだけではないことを示しています。
実際に過去のいくつかの研究でも、「他者の心を読み取って注意シフトが起こる」と報告されています。
では、このような心を読み取る注意シフトは、人間とアンドロイドでも生じるのでしょうか。
もし、私たちがアンドロイドを人間のように心のある存在として認識できるなら、「何に関心があるのだろう。何を見ているのだろう」とアンドロイドの心に注目し、「注意シフト」が発生することでしょう。
逆に、私たちがアンドロイドを単なる「物」としか認識できないなら、「心を読み取る注意シフト」は発生しないはずです。
その場合、アンドロイドの目の動きは、私たちにとって、「ただの動き」であり、心の伴わない「視覚情報の変化」に過ぎないことになります。
今回、佐藤氏ら研究チームは、この点を明らかにするため、視線を動かせるアンドロイド「Nikola」を用いた3つの心理実験を行うことにしました。