全生命の共通祖先は既に免疫システムを持っていた:その意味とは?
全生命の共通祖先は既に免疫システムを持っていた:その意味とは? / Credit:Edmund R. R. Moody et al . Nature Ecology & Evolution (2024)
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全生命の共通祖先は既に免疫システムを持っていた:その意味とは?

2025.02.24 17:00:59 Monday

地球が今よりはるかに荒涼とした姿だった頃、そこに生まれたはずの最初期の生命が、実はすでにウイルスに対抗する“免疫システム”を持っていたかもしれない――。

そんな衝撃的な可能性が、イギリスのブリストル大学(UoB)によって行われた研究によって示されています。

私たち人間や動植物、微生物までも含む全細胞生物が共有する祖先、LUCA(ルーカ)は、これまで「ごく単純な原始生命」だと考えられがちでした。

しかし研究者たちは、分子解析の結果からLUCAが驚くほど洗練された防御機能を備えていた形跡を指摘しているのです。

いったい、なぜ最も初期のLUCAが既に免疫システムを持っていたのでしょうか?

研究内容の詳細は『Nature Ecology & Evolution』にて公開されました。

The nature of the last universal common ancestor and its impact on the early Earth system https://doi.org/10.1038/s41559-024-02461-1

“早すぎる生命誕生”の謎

全生命の共通祖先は既に免疫システムを持っていた:その意味とは?
全生命の共通祖先は既に免疫システムを持っていた:その意味とは? / この図は、DNAやRNAに蓄積される突然変異を利用して、各生命グループがいつ分岐したかを推定する「分子時計」解析の結果を示しています。 図には、主要な生物グループが色分けされており、例えば「Arc」は古細菌(Archaea)を、「Bak」は細菌(Bacteria)を、そして「Euk」は真核生物(Eukaryotes:複雑な細胞を持つ動植物や菌類など)を示しています。 また、紫色の星印は、化石記録をもとに年代の校正が行われたポイントを表しており、これにより推定の信頼性が高められています。 図中の各ノード(分岐点)は、統計的な「後部時間密度」を示しており、クロスブレイシングという手法で、遺伝子重複の情報を二重に校正しているため、LUCAが存在したとされる約42億年前(推定範囲:4.09~4.33 Ga)の年代がより厳密に導かれています。/Credit:Edmund R. R. Moody et al . Nature Ecology & Evolution (2024)

地球が誕生したのはおよそ45億年前と考えられていますが、その初期は灼熱(しゃくねつ)の世界と隕石(いんせき)の衝突が絶えず、生命など存在しようがないと長い間思われてきました。

さらに、約40~38億年前には「後期重爆撃期(こうきじゅうばくげきき)」と呼ばれる時期があったとされ、その衝撃で初期の生命は根こそぎ絶滅したはずだという説もありました。

しかし近年、月の岩石サンプル分析の見直しや海底の極限環境モデルの進展により、地球が当時ほど過酷だったにもかかわらず、意外なほど早い段階で生命が生き延びていた可能性が議論されるようになっています。

そうした背景の中で注目されるのが、私たちが今日知るすべての細胞生命へとつながる祖先、LUCA(ルーカ)です。

分子生物学的な手法、いわゆる「分子時計」による解析から、LUCAは想像以上に太古の時代、およそ42億年前(推定範囲は4.09~4.33 Ga)にまで遡れることが示唆されてきました。

さらに、“最後の普遍共通祖先”とはいえ、実際はごく単純な微生物というより、意外にも多様な代謝や防御機構を有していたのではないか――そうした見解が近年の研究で徐々に強まってきています。

今回の研究は、このLUCAがなぜそんなに早く免疫システムを手にしていたのか、そしてどれほど複雑な生態系が当時すでに存在していたのかを問い直す試みなのです。

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