“早すぎる生命誕生”の謎

地球が誕生したのはおよそ45億年前と考えられていますが、その初期は灼熱(しゃくねつ)の世界と隕石(いんせき)の衝突が絶えず、生命など存在しようがないと長い間思われてきました。
さらに、約40~38億年前には「後期重爆撃期(こうきじゅうばくげきき)」と呼ばれる時期があったとされ、その衝撃で初期の生命は根こそぎ絶滅したはずだという説もありました。
しかし近年、月の岩石サンプル分析の見直しや海底の極限環境モデルの進展により、地球が当時ほど過酷だったにもかかわらず、意外なほど早い段階で生命が生き延びていた可能性が議論されるようになっています。
そうした背景の中で注目されるのが、私たちが今日知るすべての細胞生命へとつながる祖先、LUCA(ルーカ)です。
分子生物学的な手法、いわゆる「分子時計」による解析から、LUCAは想像以上に太古の時代、およそ42億年前(推定範囲は4.09~4.33 Ga)にまで遡れることが示唆されてきました。
さらに、“最後の普遍共通祖先”とはいえ、実際はごく単純な微生物というより、意外にも多様な代謝や防御機構を有していたのではないか――そうした見解が近年の研究で徐々に強まってきています。
今回の研究は、このLUCAがなぜそんなに早く免疫システムを手にしていたのか、そしてどれほど複雑な生態系が当時すでに存在していたのかを問い直す試みなのです。