ダウン症とは? 700人に1人が抱える染色体の異常

ダウン症は、ヒトの21番染色体が1本多く(合計で3本)なってしまう先天的な染色体異常です。
世界的にはおよそ700人に1人の割合で生まれるとされ、最も一般的な染色体異常のひとつとして知られています。
ダウン症のある方は、知的発達障害をはじめ、心臓を含むさまざまな合併症を経験する場合が多く、一生を通して支援やケアが必要になることも少なくありません。
特に顔の骨や軟骨、筋肉の形成を司る遺伝子が過剰に発現するため、顔の発育パターンが通常とは異なり、独特な形状が生じます。
その結果、目が小さく、鼻が低く平坦になり、口元や耳の位置に特徴が現れるなど、ダウン症候群に特有の顔立ちが形成されることがあります。
これらの異常は、余分な染色体により、21番染色体上の多くの遺伝子が通常以上に働き、細胞内でのシグナル伝達や成長因子のバランスが乱れることが原因と考えられています。
近年は医療技術の進歩によって、心臓手術などの外科的治療が飛躍的に向上し、ダウン症のある人の平均寿命は伸びてきました。
しかし、21番染色体が多いという根本原因そのものを取り除く方法は長らく存在せず、日常生活の支援や合併症への対処が中心でした。
出生前検査が広く行われるようになった一方で、ダウン症のある人々の数は世界的にも増えつつあり、社会全体でのケアや支援の必要性が高まっています。
こうした中、ゲノム編集技術のひとつ「CRISPR-Cas9」は、DNAを狙った場所で切断できることで、がん研究や遺伝病の治療分野などで注目を集めてきました。
今回の研究は、この最先端技術を応用して「余分な21番染色体を細胞から取り除く」という、大胆かつ根本的なアプローチを試み、ダウン症の治療や理解に新たな可能性を示した点が大きな注目を集めています。