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ISSを「不潔にする」と宇宙飛行士が健康になる可能性 (2/2)

2025.03.03 06:30:44 Monday

前ページ適度に汚い場所の方が健康になる⁈

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ISSは清潔すぎ!不潔にすることで健康改善できる可能性

今回の研究では、宇宙飛行士にISS内部の異なる803箇所の表面を綿棒で拭き取ってもらい、それを地球に持ち帰りました。

その後、研究チームは各サンプルにおける微生物の多様性や化学物質を解析。

またISS内部の3Dマップを作成し、どのモジュールにどの微生物や化学物質が存在するのかを詳細に分析しました。

これは過去に行われたISSの微生物調査の約100倍の規模になるといいます。

その結果、ISSの微生物環境には次のような特徴があることが明らかになりました。

1:ISS内部は微生物の多様性が極端に低い

地球の閉鎖された建築環境(病院や都市部の家屋)よりもさらに微生物の種類が限られていた

2:ISSの微生物はほとんどが人間由来

ISSで見つかった微生物は、宇宙飛行士の皮膚や消化管由来の細菌が大部分を占めていた

3:モジュールごとに異なる微生物のパターン

食事エリアには食品関連の微生物が多く、トイレ周辺には尿や糞便由来の微生物が多かった

4:消毒剤の使用が微生物の多様性を減少させている

ISSでは強力な消毒剤の化学物質が多く検出されており、その影響で環境中の微生物が大幅に減少していると推定された

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上:食事スペースでは食品関連の微生物が、トイレスペースでは排泄物に関連する微生物が多い。下:居住環境ごとの微生物の多様性レベル(緑)と化学物質のレベル(水色)/ Credit: Rodolfo A. Salido et al., Cell (2025)

そこで研究者たちは、ISSの微生物環境を「適度に汚す」ことが宇宙飛行士の健康にとって有益かもしれないと考えています。

これは「地球上で園芸や農作業が免疫を強化するのと同じ原理」だといいます。

実際、土壌には健康に良い微生物が豊富に含まれており、これらの微生物に触れることで、免疫系が適切に活性化されることが分かっています。

したがって、ISSでも「良い微生物」を導入することで、宇宙飛行士の健康を改善できる可能性があるのです。

具体的には、

・ガーデニングなどで、土壌や植物由来の微生物をISSに持ち込む

・微生物を含む空気清浄機を導入する

・宇宙飛行士が育てた植物の周囲に自然な微生物環境を作る

といった方法が考えられます。

またISSに限らず、地球上の病院や都市部の住環境でも、過度な消毒を避け、適度な微生物環境を維持することが健康に良い可能性があります。

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Credit: canva

今回の研究は、一般的に定着している「清潔であることは良いことだ」という常識に疑問を投げかけるものです。

もちろん、適切な衛生管理は重要ですが、「清潔すぎる環境」がかえって健康に悪影響を与える可能性があることを考慮する必要があります。

またこれはISSだけに当てはまることではなく、私たちの日常生活にも同じことが言えます。

過度な消毒や掃除で家の中を清潔にするよりも、多少掃除をサボって、庭先でガーデニングをすると免疫力がアップするかもしれません。

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ISSを「不潔にする」と宇宙飛行士が健康になる可能性 (2/2)のコメント

ゲスト

系外惑星への光年単位の距離を世代間宇宙船で航海するときこの問題がもっと切実になると思う。体内共生体の多様性は出発人員で限られるし、やがて全体が衰退して目的地に到着する前に滅亡してしまいそう。銀河系探索どころかお隣の恒星系に行くのも困難だと思い、がっかりしますね。

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