なぜ「安心できるはずの相手」に緊張してしまうのか?

なぜ、仲の良いはずの母親や姉妹がストレスの原因になったか?
その理由のひとつとして考えられるのが、限られたエサをめぐる「競争」です。
血縁者とは普段から協力し合う関係にありますが、食事の場面ではそうはいきません。
むしろ、親しい関係だからこそ、エサの取り合いや譲り合いの駆け引きが発生し、緊張が高まる可能性があるのです。
これは、人間の家族や親しい友人との関係にも似ているのではないでしょうか?
仲が良いからこそ、お互いに気を遣ったり、本音をぶつけたりすることで、かえってストレスを感じることがあるのかもしれません。
一方で、血縁のない個体と一緒にいるときには、スクラッチの頻度があまり増えませんでした。
これは、非血縁の相手とは距離感がはっきりしているため、競争を避けたり、適切なタイミングで譲るなどして、ストレスを最小限に抑えられるからだと考えられます。
むしろ、「仲が良いからこそ、守るべきものが多い」「気を遣う場面が増える」ことが、ストレスを生み出す要因になっているのかもしれません。
この結果は、ニホンザルの社会のリアルな一面を明らかにしただけでなく、動物の社会行動が私たちの日常とどのようにリンクしているのかを考える新たな視点を提供してくれます。