サルにも「仲良しだからこそ緊張してしまう」ことがあると判明!
サルにも「仲良しだからこそ緊張してしまう」ことがあると判明! / Credit:Canva
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サルにも「仲良しだからこそ緊張してしまう」ことがあると判明!

2025.02.28 17:00:20 Friday

家族や親しい友人といると、安心できるはず――多くの人がそう感じるでしょう。

けれども、実際には「仲が良いからこそ、なぜか緊張する」場面もあるのではないでしょうか?

そんな意外な現象が、私たち人間だけでなく、野生のニホンザルにも見られることが明らかになりました。

総合研究大学院大学(SOKENDAI)の研究によると、血縁関係のある相手(母や姉妹)がそばにいると、サルたちはストレスのサインとされる「セルフスクラッチング(自分の体を引っかく行動)」をより多く行うことが判明したのです。

ただし、この現象が顕著に見られたのは「食事中」のみで、休息中には血縁の有無による差はほとんど見られませんでした。

この「仲の良さと緊張」の関係は、職場や家庭など、私たちの日常にも通じるものかもしれません。

なぜ、信頼できるはずの相手が、時にストレスの原因になるのでしょうか?

その答えを探るこの研究の詳細は、2025年2月21日に『Animal Behaviour』に掲載されました。

Influence of proximate individuals on self-scratching behaviour in wild Japanese macaques https://doi.org/10.1016/j.anbehav.2025.123111

まさかの血縁ストレス? “仲良しほど緊張する”は本当だった!

動物の社会では、助け合いや争いが日常的に繰り広げられています。

群れの中でどんな相手と一緒にいるかによって、ストレスレベルが変わることも考えられています。

ニホンザルは、生まれた群れに一生とどまるメスを中心とした“母系社会”を築きます。

血縁関係のあるメス同士は深い絆で結ばれ、従来の研究では「血縁が近いほど安心できる」と考えられてきました。

しかし、実際の社会では、エサをめぐる競争が激しくなることもあり、「仲がいい=安心」とは限らないのです。

サルにも「仲良しだからこそ緊張してしまう」ことがあると判明!
サルにも「仲良しだからこそ緊張してしまう」ことがあると判明! / 採食中、近接個体が一頭のみだった場合に、血縁個体が近接していたときとしていなかったときのスクラッチ頻度との関係を示す/Credit:仲良しだから緊張する:野生ニホンザルの社会的ストレスに関する新規な現象の発見

今回の研究では、2015年4月から8月にかけて合計58日間、宮城県の牡鹿半島沖にある金華山で野生のニホンザルを観察し、特に成体メス11頭の行動に注目しました。

研究者たちは、合計205時間にわたる観察の中で、サルたちが「休息しているとき」と「エサを食べているとき(採食中)」のストレスレベルを比較しました。

この研究の鍵となったのが、「セルフスクラッチング(自分の体を引っかく行動)」です。

霊長類はストレスや緊張を感じると、この行動を頻繁に行うことが知られています。

そのため、スクラッチの回数を分析することで、サルたちがどの場面でストレスを感じているのかを探ることができるのです。

観察では、各メスの周囲1メートル以内にいる個体の血縁関係や順位関係、親密度なども記録し、休息中と採食中のスクラッチの変化を比較しました。

その結果、休息中は「まわりに誰もいないとき」にスクラッチが増える傾向が見られました。

これは、群れから取り残されることへの不安がストレスにつながるためと考えられます。

一方、採食中のスクラッチの傾向はまったく異なりました。

ただ周囲に他のサルがいるかどうかではなく、「血縁関係があるかどうか」が大きく影響していたのです。

特に、母親や姉妹がそばにいるときほど、スクラッチが増えることが判明しました。

これは、従来の「血縁相手といると安心できる」という通説とは真逆の結果です。

ではなぜ、仲の良いはずの母親や姉妹がストレスの原因になったのでしょうか?

次ページなぜ「安心できるはずの相手」に緊張してしまうのか?

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