「血縁=安心」ではない!? 人間社会にも通じるサルたちのリアルな関係性

この研究が明らかにしたのは、ニホンザルのメスたちにとって、「誰と一緒にいるか」によってストレスの原因や影響が大きく変わるということでした。
特に、食事中に血縁者が近くにいることでストレスが高まるという結果は、これまでの「血縁が近いほど安心できる」という考え方とは異なる、新しい視点を提示しています。
普段は協力し合う母親や姉妹の関係も、エサをめぐる場面では「譲れない」「競争しなければならない」という状況に変わります。
これは、私たち人間の社会にも共通するものがあります。
例えば、家族や親しい友人との間では、相手に対する期待や配慮が大きいため、何気ない言動がストレスの原因になることがあります。
身近な人との関係ほど、思わぬ緊張や気まずさを生むことがあるのです。
また、この研究は、セルフスクラッチングという行動が動物の社会的ストレスを測る有効な指標であることも示しました。
今後、さらに多くの群れや異なる霊長類の種を対象に同様の研究を進めることで、私たち人間の社会におけるストレスの仕組みを理解するヒントが得られるかもしれません。
このように、「仲の良し悪し」だけでは説明しきれない複雑な動物社会のルールは、私たちの日常にも通じる部分があります。
「仲良し=安心」というシンプルな構図の裏には、実は隠れた競争や遠慮、そして微妙な力関係が潜んでいるのかもしれません。
これは、社会的な動物である私たち人間にとっても、とても興味深い視点ではないでしょうか。