ホッキョクグマの子が初めて巣穴から出る映像が記録される

研究チームが記録した映像では、巣穴脱出のプロセスが明確に示されていました。
最初に巣穴を出るのは母グマで、外の環境を慎重に確認します。
その後、赤ちゃんグマたちは慎重に母グマの後を追いながら巣穴から這い出し、新しい世界へと踏み出します。
赤ちゃんたちはすぐには移動せず、数日から数週間、巣穴の周辺で適応訓練を行うことが分かりました。
この期間、母グマは狩りを再開せず、巣穴周辺で子グマを見守ります。
これは、赤ちゃんが極寒の環境に適応し、筋力をつけるための重要な時期だと考えられています。

ホッキョクグマの親子が巣穴の近くに留まる期間は平均12日ほどですが、この期間は家族によって大きく異なるようです。
ちなみに赤ちゃんグマたちがひとりで外にでることは滅多になく、赤ちゃんグマが母親と離れているの様子が観察されたのは全体のたった5%でした。
スヴァールバル諸島では、子熊は最長で2年半も母親に依存して生きていくのです。
また研究では、気温や時間帯が巣穴脱出のタイミングに影響を与えることも確認されました。
気温が高いほど赤ちゃんグマが巣穴の外にいる時間が長くなり、逆に寒い日には巣穴に戻る時間が増える傾向があることが分かりました。
そしてホッキョクグマのこれらの育成プロセスは、現在深刻化している気候変動の影響を受ける可能性があります。
研究者たちも、「ホッキョクグマの巣穴脱出は非常に繊細なプロセスであり、少しの環境の変化が影響を及ぼす可能性がある」と述べています。
今後の研究ではさらに広範囲での観測を行い、気候変動の影響をより詳細に追跡していく必要があります。