ホッキョクグマの赤ちゃんを保護する「巣穴」の生活

ホッキョクグマの母グマは、秋から冬にかけて雪の中に巣穴を掘り、その中で出産し、数か月間赤ちゃんを育てます。
生まれたばかりの赤ちゃんは体重600gほどで、毛が薄く、自力で寒さに耐えることができません。
そのため、巣穴は赤ちゃんを寒さや外敵から守るシェルターの役割を果たします。
そして赤ちゃんたちは、母乳とアザラシの脂肪を得て、急速に成長します。
1年目の春に巣穴を離れるまでには、体重が約10kgにもなります。
翌年には、ホッキョクグマの親子は再び巣穴に戻り、母親は子熊が乳離れするまで見守ってあげます。
この最初の2年間は子熊が生き残るために非常に重要なプロセスだと考えられています。

それでもホッキョクグマの赤ちゃんが大人になるまで生き残ることができるのは、全体の約半分だけです。
だからこそ、ホッキョクグマの個体群を保護する活動は重要です。
しかし、彼らは人里離れた雪の下に巣穴を作るため、巣穴におけるホッキョクグマの様子を研究することは簡単ではありません。
そこで、トロント大学スカボロ校の研究チームは、ノルウェーのスヴァールバル諸島で約10年にわたって遠隔カメラを用いた撮影を行い、ホッキョクグマの親子の様子を粘り強く記録し続けました。
そのおかげで、この度、ホッキョクグマの赤ちゃんが初めて巣穴から出る様子を取得することに成功しました。
また巣穴で生活するホッキョクグマの親子に関する貴重な情報もいくつか入手できました。