スピーチが怖くなるのはなぜ?
人前で話すことに不安を感じるのは、決して珍しいことではありません。
実際、「スピーチ恐怖症」は多くの人に見られる一般的な恐怖のひとつとされ、多くの研究で報告されています。
特に学生や社会人にとって、プレゼンテーションやスピーチは避けられない場面です。
しかし調査によると、イギリスの学生の約80%、アメリカの学生の約90%が発表時に不安を感じていることが分かっています。
このスピーチ不安の背景には、心理学的な要因がいくつか関係しています。
主な原因としては、
・「失敗したらどうしよう」というネガティブな自己評価
・人前での発表が少なく、慣れていないことによる経験不足
・聴衆の視線や反応を過度に気にする社会的不安
などが挙げられます。

これまでの研究では、不安を克服する方法として「暴露療法(Exposure Therapy, ET)」が有効であることが指摘されていました。
これは実際に人前でのスピーチ練習を重ねることで少しずつ恐怖の対象に慣れさせ、不安を軽減する治療法です。
しかし対面でのセラピーは費用が高く、時間がかかりますし、実際の聴衆を用意するのが難しいという問題があります。
また練習とはいえ、いきなり本物の人の前でスピーチ練習することに抵抗を覚える人も多いでしょう。
そこで新たに注目されているのがVRを活用した暴露療法(VRET)です。
VRならば、安全な環境で何度でもスピーチの練習ができ、コストも抑えられます。
では今回の研究では、どのようなVR実験が行われたのでしょうか?