カンジの天才性を物語る逸話
カンジは1980年10月28日に、米エモリー大学の霊長類研究センターで生まれました。
生後まもなく、養母となったメスのボノボ「マタタ」と一緒に、言語研究の現場に足を踏み入れます。
そこで研究者たちは「レキシグラム」と呼ばれる記号を使って、ボノボに人間の言語を教えようとしました。
レキシグラムとは、人間以外の霊長類のために開発された人工言語で、物や概念を表す記号(=レキシグラム)が描かれたコンピューターのキーボードを使って、霊長類に言語を教えます。
例えば、こちらは人工言語の開発者であるスー・サベージ=ランボー氏を表したレキシグラムです。

この実験は当初、マタタをメインに進める予定でしたが、彼女はまったく興味を示しませんでした。
しかしそれと裏腹に、幼いカンジはレキシグラムを次々を覚えていき、その学習スピードと言語の理解力で研究者たちを大いに驚かせたのです。
カンジはついに300以上のレキシグラムを習得し、それらを組み合わせて新しい意味を作り出す能力まで発揮しました。
これは私たち人間が単語を組み合わせて文章を作り出すようなものであり、カンジに抽象的な思考力があることを示した事例でした。

さらに驚くべきは、カンジが英語の音声指示を理解できたことです。
カンジが8歳のときに行われた実験では、カンジと人間の2歳児に660の音声命令が与えられました。
結果、カンジは人間の子どもよりも良い成績を収め、彼が少なくとも人間の幼児と同程度の知能を持っていることが判明しています。
また、手話を習得していたゴリラの「ココ」の映像を見るだけでアメリカ手話(ASL)を学習してしまったことも彼の天才性を物語るエピソードの一つとして有名です。