タイトルがすべてを変える:学術評価の新視点

学術論文の評価には、しばしば「引用数」が用いられます。
これは、ほかの研究者が自分の研究論文で参照した回数を示す指標です。
一見すると、「良い研究ほどたくさん引用される」と思いがちですが、実際には論文のタイトルやページ数、共著者数など、さまざまな要素が引用数に影響を与えることがわかってきました。
たとえば、タイトルが短いほど目を引きやすいとか、ユーモアを交えたタイトルには好意的・否定的それぞれの反応があるなど、どんなタイトルが有利になるかについては多くの議論がなされてきました。
そんな中、「三」という数字が持つ特別な力が改めて注目を集めています。
古代ローマの将軍カエサルが用いた「Veni, Vidi, Vici(来た、見た、勝った)」が有名ですが、なぜ三つ並べると強い印象を与えるのか。
心理学研究によれば、人間の短期記憶は三つ程度に小分けされた情報をとりわけ覚えやすいという特徴があるとされます。
つまり、「三つの言葉」をまとめて提示するだけで、読む人の脳内にスッと入り込む可能性が高まるのです。
三拍子や三部作など、私たちは普段から「三つ並び」にどこか心惹かれやすいといわれるゆえんでもあります。
とはいえ、「三つ並べた言葉」をタイトルに含めると実際にどれだけ引用数が増えるのか、具体的な検証はあまり進んでいませんでした。
そこで今回、経済学と医学・生命科学の両方で数十万件に及ぶ論文タイトルを調べ、引用数との関係を統計的に分析する取り組みが始まりました。
論文の質そのものはもちろん、ページ数や共著者数、掲載ジャーナルの特徴、さらには専門家による評価などをも含めて調整しながら、「三つ並んだキーワード」が実際にどれほど強いインパクトを与えるのかを見極めようとしたのです。