画像
チューブと空気で歩くロボットは「足で考える」 / Credit:AMOLF
robot

【なぜ脳が無くても賢い?】チューブと空気で歩く新ロボットは”足で考える”【しかも高速】

2025.05.16 20:00:20 Friday

縁日などで見かける、息を吹きかけると「ピューッ」と伸びる笛のおもちゃで遊んだことはありませんか?

実は、このシンプルな空気の仕組みが、最先端ロボット技術の未来を大きく変えるかもしれないのです。

オランダのAMOLF研究所のチームは、空気を送り込むだけで自律的に歩行するロボットを開発しました。

このロボットには、なんと「脳」も「センサー」もありません。

それでも、周囲に応じて障害物を避けたり、陸から水中へと動作モードを切り替えたりする「足で考えるロボット」なのです。

研究の詳細は、2025年5月8日付の科学誌『Science』に掲載されました。

Air-powered robot uses physics instead of circuits to run on tube-legs https://newatlas.com/robotics/soft-robot-physics-locomotion/ This soft robot “thinks” with its legs https://amolf.nl/news/this-soft-robot-thinks-with-its-legs
Physical synchronization of soft self-oscillating limbs for fast and autonomous locomotion https://www.science.org/doi/10.1126/science.adr3661

おもちゃに見られる「空気とチューブ」を使って、高速移動する「脳を持たないロボット」が開発される

画像
笛のおもちゃ「引き戻し」とチューブマン / Credit:(左)Wikipedia Commons、(右)Wikipedia Commons

まず、私たちに馴染み深いおもちゃを思い出してみてください。

吹き戻しと呼ばれる紙の笛「吹き戻し(または巻き笛、ピーヒャラ笛)」や、イベントで見かける「チューブマン(またはエアダンサー)」です。

これらは、空気の流れによって柔らかい素材が動くという単純な物理現象を利用しています。

吹き戻しは、息を吹くと筒がスーッと伸びて、空気が抜けるとクルクルと巻き戻ります。

チューブマンは送風機の風で膨らみ、重力や不安定なバランスによって踊るような動きを見せます。

今回の研究チームは、この仕組みを利用して、構造物に「自律性」を持たせられるのではないかと考えました。

彼らは、エラストマーという柔らかくて弾力のある素材で作られた、くねくねしたチューブを用いました。

画像
チューブと空気で動くロボットを開発 / Credit:AMOLF

このチューブには、あらかじめ折れ曲がった部分「屈曲部」があり、そこに空気を送り込むと、その部分が移動します。

そして「屈曲部」の位置が変わると、空気の流れも変化し、それによって再び別の場所に「屈曲部」が現れるという振動が起こります。

チューブが一本だけだと、この振動はランダムです。

しかし、チューブを複数本組み合わせて「足」にすると、地面との摩擦や空気の流れによる物理的な影響だけで、それぞれの動作が自然と同期し始めます。

その結果、制御信号を一切使わずにロボットが歩き始めるのです。

コンピューターもセンサーも必要なく、空気と柔らかい素材と物理法則だけで動くのです。

こうして、「を持たない、足で考えるロボット」が誕生しました。

とくに注目すべきは、その柔軟性とスピードです。

画像
チューブと空気で動くロボット。高速 / Credit:AMOLF(YouTube, 2025)

このロボットは、最大で1秒間に体長の30倍の距離を進むことができます。

動画で確認すると分かる通り、ソフトロボットとしては、恐ろしいほどの移動速度です。

フェラーリが1秒間に車体の20倍の距離を移動することを考えても、やはり常識外れの性能だと言えます。

そして続く部分では、このロボットが「足で考える」と言える理由をさらに考えていきます。

次ページ「足で考えるロボット」が開発される!脳が無くても環境に合わせて足の動きを変える

<

1

2

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

スマホ用品

ロボットのニュースrobot news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!