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既存薬2種類の混ぜ合わせでマウスの寿命を約30%延長 (3/3)

2025.05.30 22:00:21 Friday

前ページマウスが“+30%”長生きした決定打はたった2錠

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ヒトでも効く? 次の壁は副作用と用量設計

ヒトでも効く? 次の壁は副作用と用量設計
ヒトでも効く? 次の壁は副作用と用量設計 / Credit:Canva

では、なぜ2つの経路を同時に抑えるとこれほど老化を抑制できたのでしょうか?

著者らはそのメカニズムの手がかりとして、併用投与したマウスの遺伝子発現パターンを詳細に解析しました。

その結果、併用治療だからこそ現れる特有の変化が各組織で見られたといいます。

単剤投与では現れなかった発現量が大きく変化する遺伝子が数多く検出され、老化や代謝に関わる経路の調節が一層強力かつ広範囲に及んでいたことが示唆されました。

これは「効果が倍量になるだけの単純な足し算ではなく、質的に新しい作用が加わった可能性がある」ことを意味します。

さらに重要な点として、2剤併用によるラパマイシン既知の副作用(肝脂肪変性・高血糖など)は残存したが、新たな毒性は加わらなかったことも報告されています。

通常、薬を複数使えば副作用リスクも増す懸念がありますが、適切な用量設定のもとでは少なくともマウスでは有害な影響が増えなかったのです。

今回の成果は、既存の医薬品を用いて老化そのものを制御しようとする戦略の可能性を示しました。

ただしマウスで見られた「寿命30%延長」という劇的効果が、そのまま人間にも再現できるとは限らないと研究チームは強調しています。

共著者のリンダ・パートリッジ教授は「ヒトでマウスと同じ寿命延長が得られるとは期待していません。むしろ今回調べた薬によって、高齢期をより健康に過ごせるようになることを望んでいます」とコメントしています。

ラパマイシンおよびトラメチニブはいずれもすでにヒトに承認・使用されている薬剤のため、その意味では臨床応用へのハードルは全くの新薬と比較して低いと言えるでしょう。

実際、研究グループは今後トラメチニブの最適な投与量や投与経路を検討し、人で副作用を最小限に抑えつつ効果を最大化する方法を探る計画です。

筆頭著者のセバスチャン・グレンケ博士は「トラメチニブ、とりわけラパマイシンとの組み合わせは、老化防止薬(ジェロプロテクター)として臨床試験で試す有望な候補です。

我々の結果が今後他の研究者によって引き継がれ、人間で試験されることを望んでいます」と述べています。

安全性や効果を慎重に見極める時間は必要ですが、将来的にはこのような「抗老化カクテル」によって人間の健康寿命を延ばすことも夢ではなくなるかもしれません。

今回のマウス実験の成功は、“老化という壁”に挑む医療研究において大きなマイルストーンと言えるでしょう。

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既存薬2種類の混ぜ合わせでマウスの寿命を約30%延長 (3/3)のコメント

ゲスト

怪我とかからの回復は遅れそうな気がしますけど、どうなのでしょう。

ゲスト

調べたらラパマイシン1粒1000円は高いな

おっさん

私が老人になるまでに実用化されてほしい

ゲスト

こういうのが本格的に成果を出し始めたら、先ずは大富豪や独裁者から急に寿命が伸び始めるので、それを見て判断すればいいでしょう。

ゲスト

長生きしたいのも実行できるのも富裕層が多いだろうから
実現したら寿命サイクルが二極化しそうだな

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