私たちの宇宙はブラックホールの中で「跳ね返り爆発」で生まれた
私たちの宇宙はブラックホールの中で「跳ね返り爆発」で生まれた / Credit:Canva
quantum

私たちの宇宙は巨大ブラックホールの中で「跳ね返り爆発」で生まれた (3/3)

2025.06.16 18:30:10 Monday

前ページ私たちの宇宙はブラックホールの中で生まれた

<

1

2

3

>

観測で試される跳ね返り宇宙

観測で試される跳ね返り宇宙
観測で試される跳ね返り宇宙 / Credit:Canva

この新モデルによって、従来のビッグバン宇宙論が抱えていた特異点問題(物理法則が適用できない始まりの点)に一つの解決策が提示されました。

また、インフレーションやダークエネルギーを説明するために新たな未知の場を導入しなくても、既知の物理法則だけで観測事実を再現できる道筋が示された点も大きな意義です。

さらにこのモデルは、初期宇宙の他の謎—例えばなぜ短時間で超大質量ブラックホールが形成されたのか、ダークマターの正体は何か、銀河はどのように階層的に成長したのか—といった問題にも新たな光を当てる可能性があると研究者らは述べています。

実際、本モデルでは、バウンス後の初期宇宙に残されたブラックホールなどの「遺物」が、ダークマターや銀河形成の起源に関連する可能性を指摘しています。

興味深いことに、この仮説は単なる理論的な思考実験に留まりません。

検証可能な予測を伴っている点で科学的なテストに耐えうるとされています。

例えば本モデルでは、我々の宇宙が完全に平坦ではなく、球面のようにごく緩く丸まっていること(わずかな正の曲率を持つこと:数値では Ω k が負側)を予測しています。

このわずかな宇宙の曲率は、将来の宇宙観測プロジェクトで検証可能です。

欧州宇宙機関(ESA)のエウクリッド(Euclid)宇宙望遠鏡による高精度観測でもし宇宙がわずかに閉じた形(正の曲率)であることが確認されれば、このバウンス宇宙モデルを強く支持する証拠となるでしょう。

さらに本モデルが導き出す現在の宇宙膨張率は、観測されているハッブル定数の範囲と矛盾しないことが示されています。

研究者たちは、欧州宇宙機関の新しい観測計画ARRAKIHSにも言及し、この衛星に搭載される広視野望遠鏡で銀河の外縁部にある極めて淡い構造を探ることで、本モデルを検証する手がかりが得られる可能性があると述べています。

銀河の周辺構造の観測は暗黒物質の分布や銀河進化の理解に不可欠であり、バウンス宇宙モデルで予言される初期の遺物天体の存在を裏付ける証拠が見つかるかもしれません。

もしこの「ブラックホール宇宙」モデルが正しければ、私たちの宇宙全体が一つのブラックホールの内部にあるという驚くべき図式が浮かび上がります。

つまり、我々の宇宙は上位の「親宇宙」で重力崩壊した巨大星(もしくは物質塊)がブラックホールとなり、その内部で生まれた一つの世界だというのです。

これはまるで、かつて人類が「地球は宇宙の中心ではなかった」と認識を改めたコペルニクス的転回になぞらえられます。

私たちの宇宙は決して特別な“唯一の存在”ではなく、より大きな宇宙サイクル(循環)の一部なのかもしれません。

研究者は「我々は無から万物が生み出される瞬間を目撃しているのではなく、むしろ重力と量子力学が形作る宇宙のサイクルの継続を目にしているのです」と述べています。

ビッグバンに代わるこの新たな仮説は、宇宙の起源と運命について私たちの視野を広げ、これからの観測や研究によってその真偽が明らかにされていくでしょう。

<

1

2

3

>

私たちの宇宙は巨大ブラックホールの中で「跳ね返り爆発」で生まれた (3/3)のコメント

ゲスト

とすると我々の宇宙の外にあるブラックホールが含まれる宇宙の始まりは一体…?

らららるるる

この宇宙の親やそのまた親、親戚、となりのおっちゃんおばちゃん、、、たちは、どのようにして生まれたんだろうか。
特異点はやはり存在するのでは…

コメントを書く

※コメントは管理者の確認後に表示されます。

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

スマホ用品

量子論のニュースquantum news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!