AIが殺人被害者を蘇生させ法廷で証言させたと判明➔判事「法律上問題なし」
AIが殺人被害者を蘇生させ法廷で証言させたと判明➔判事「法律上問題なし」 / Credit:A.I. of Murdered Chris Pelkey Makes His Own Impact Statement at Sentencing (a court 1st), with Judge
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AIが殺人被害者を蘇生させ法廷で証言させたと判明➔判事「法律上問題なし」 (3/3)

2025.06.18 21:00:16 Wednesday

前ページ被害者のAIはいかにして作られたか?

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AIが証言する倫理的な問題について

AIが証言する倫理的な問題について
AIが証言する倫理的な問題について / 未来のある裁判の風景をオマージュしたもの。未来では被害者の全人格をエミュレートしたAIが被害者等意見陳述を行うかもしれません。

今回のAI被害者映像は、裁判所に新たな感動をもたらした一方で、法廷におけるAI技術の利用範囲について様々な議論を巻き起こしています。

ホルカシタス受刑者の弁護人ジェイソン・ラム弁護士は、判決直後に刑を不服として即座に控訴(上訴)しました。

ラム弁護士はラム弁護士はABCの取材に対し、「AIで被害者を“よみがえらせ”、本当に言ったか分からない言葉を口にさせるのは問題だ」と述べ、今回の映像は「不正確な作り物」であり、被害者の口に他人の言葉を入れる行為だと批判しています。

陪審を経た有罪評決自体は事実に基づくものですが、このAI映像が量刑判断に影響を及ぼしたか否かについて、上級審で争点となる可能性があります。

実際ラム弁護士は、控訴審では「判事がAI映像にどれほど依拠して量刑を決めたか」が問われるだろうと指摘しています。

法律家や技術の専門家からは、今回のケースに対する評価は概ね慎重ながら肯定的です。

AIの法廷利用を研究する研究者も、「多くの場合、AI生成の証拠は誤解や偏見を生む可能性があり、有害になり得る」とし、重大な法的問題は生じていないとの見方を示しています。

アリゾナ州最高裁のアン・A・スコット・ティマー首席判事(法倫理・新興技術専門)も、「被害者本人の声を代弁しようとする今回のようなケースは、AIによる虚偽映像利用の中では最も許容し得る部類だ」と述べています。

AI映像を法廷で流すこと自体はアリゾナ州法に反しておらず問題ないとの見解です。

ただしティマー首席判事は「同様の技術が悪意ある目的に使われる可能性もある」と警鐘も鳴らしています。

実際、米国の裁判所では近年AI技術の活用が広がりつつあり、判例検索や書面作成へのAI利用から、裁判所が判決要旨を自動生成して公表するといった試みまで行われ始めています。

今回のような被害者の声の再現は極めてユニークな例ですが、専門家は「ビデオが陪審ではなく判事に向けて提示された点」がポイントだと指摘します。

判事は職務上、感情を排して公平に量刑判断を下す経験を積んでおり、映像の感動的なメッセージも冷静に位置づけて受け止めることが期待されるからです。

もしこれが陪審員に向けたものであれば、感情に左右されて公平な評決を妨げる「偏見的な証拠」と見なされて排除されていた可能性も高いでしょう。

今回は「赦し」を求める声がAI化されましたがAIが「厳罰を希望する声」を代弁した場合、事態はより複雑になると考えられます。

また今事例はAIアバターが発言する内容を遺族が手書きで作成しましたが、遺族がAIを使ってAIアバターに言わせたいことを作成した場合には、ある意味で「AIが人間の量刑に影響を与える」という側面もみられるようになるでしょう。

AIが作成した文章を被害者をかたどったAIが読み上げ、そをれを裁判官や陪審員が被害者等意見陳述と認めて評価し量刑に影響する……という将来ありえそうな構図に、拒否感を抱く人もいるかもしれません。

さらに「深層偽造(ディープフェイク)」技術の進歩と拡散に対する司法界の不安も根強くあります。

AI技術の専門家たちも、「多くの場合、AIで作られた“本物ではない証拠”は、誤解や偏見を生む恐れがあり、危険だ」と指摘しています。

現に2023年には、ニューヨーク州で弁護士不在の男性が自作のAIアバターをビデオ会議で法廷に出現させ、裁判官に即座に見破られるという出来事も報告されています。

全米的にも、AIが司法にもたらす影響に対処するための動きが始まっており、連邦裁判所のパネル(協議会)がAI生成証拠の規制策を検討し始めるなど、各州の法曹協会もAI利用の倫理指針を整備しつつあります。

今回のアリゾナ州での試みについて、関係者からは肯定的な声が多く聞かれました。

判決を見届けた遺族側の弁護士ガトゥーソさんは「法に照らしても正当な手続きだった」と評価し、上訴審でも判決は支持されるはずと述べています。

またウェイルズさん自身「AIで弟の姿と言葉を甦らせたことは家族の心の癒やしになり、私にとっても前に進むための大きな助けになった」と語っています。

ただし彼女は同時に、「もし他の人が同じことをするとしたら、私利私欲ではなく誠実な目的で行ってほしい」とも注意を促しました。

今回のように遺族の愛情に根ざしたケースは極めて特殊で善意的ですが、これが先例となって今後はより複雑な場面でAIが法廷に持ち込まれる可能性も否定できません。

司法がAI技術とどう向き合っていくべきか、そして被害者や加害者の権利とのバランスをどう保つか――。

クリス・ペルキーさんの“デジタルな声”が投げかけたこの問いに、法曹界はこれから慎重な答えを模索していくことになりそうです。

以下は参考資料になります

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AIが殺人被害者を蘇生させ法廷で証言させたと判明➔判事「法律上問題なし」 (3/3)のコメント

ゲスト

向こうの裁判って完全にショーですからね、こういうのは効果大きいでしょう。

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