知的好奇心の「骨格」は時代を通して普遍的だった
知的好奇心の「骨格」は時代を通して普遍的だった / Credit:Canva
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知的好奇心の「骨格」は時代を通して普遍的だった

2025.06.16 22:00:19 Monday

フランスのパリ社会科学高等研究院(EHESS)で行われた研究によって、古今東西の学者たちの知的好奇心には驚くほど一貫したパターンが存在することが明らかになりました。

分析の結果、学者が興味を抱く対象は大きく「人間」「自然」「抽象」という3つの領域に集中しており、その割合は時代や地域を超えてほぼ共通していたのです。

言い換えれば、人類の知的好奇心には誰もが共有する普遍的な“好奇心の骨格”が備わっているのかもしれません。

科学者たちはこの発見により、私たち人類の知の探究心に潜む共通点に光を当てています。

私たち一人ひとりの「知りたい!」という衝動は、この普遍パターンとどう結び付いているのでしょうか?

研究内容の詳細は2025年05月25日に『Scientometrics』にて発表されました。

The structure and evolution of scholarly interests from antiquity to the eighteenth century https://doi.org/10.1007/s11192-025-05340-z

制度の鎖を外して“純粋な知”を測る

制度の鎖を外して“純粋な知”を測る
制度の鎖を外して“純粋な知”を測る / Credit:Canva

このユニークな研究を行ったのは、フランスのジャン・ニコド研究所などの研究者チームです。

彼らが注目したのは、科学に対する人々の好奇心が歴史を通じてどのように発展してきたのかという点でした。

現代の研究者たちが何を探究するかは、大学制度や研究費用など様々な要因に左右されがちです。

そこで研究チームは、より純粋な「知的好奇心」のパターンを見るために、現代の制度的影響が及ぶ前の時代に目を向けました。

具体的には、近代的な大学や科学の職業化が進む以前に生きた学者たちの記録を分析対象に選んだのです。

研究者らは歴史的な人物データベース(図書目録やWikidataの情報を含む)を活用し、西暦1700年より前に生まれた正確には13,556人の学者を抽出しました。

1700年以前という時代設定には理由があります。

17世紀末頃まで(近代的な大学制度や科学の職業化が本格化する以前)は、研究の門戸が比較的開かれており、学者たちは現在よりも自由に複数の分野を渡り歩くことができました。

実際、当時は「○○学者」といった肩書きを複数持つ博学の士も珍しくなく、現代のような制度的・専門的な枠組みによる制約が少なく、より自由に複数の分野を探究できました。

研究チームはこうした歴史上の学者たちの職業や専門分野の記録に着目し、人間の知的好奇心に潜む大きなパターンを見いだそうとしました。

「私たちは科学の歴史的発展に興味を持ちました」と本研究の著者の一人であるユゴー・メルシエ氏は語っています。

現代とは異なる環境下にいた昔の学者たちを調べることで、純粋な知的好奇心がどのように現れるのかを探ることがこの研究の狙いでした。

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