殺人被害者がAI化して語ったメッセージ
AI動画が上映されたのは、量刑を決める公判の終盤でした。
傍聴席には遺族や友人、メディア関係者がおり、AIが話しかけるのを待ちました。
再生ボタンが押されると、スクリーンにはクリストファー・ペルキーさんそっくりのデジタル映像が現れ、澄んだ声が響き渡ります。
以下は、AI化した今は亡きクリストファー・ペルキーさんが法廷で語ったスピーチの要約です。
こんにちは。これをご覧の皆様に念のためお伝えしますが、私はAIによって私の写真と音声プロファイルを使って再現されたクリス・ペルキーです。今日は、私がどんな人間だったか、法廷で他人によって描写された姿ではなく、私自身のありのままの姿を伝えるためにデジタル再生されました。皆さん、今日はここに来てくださって本当にありがとうございます。
私のために声を上げてくださった方々、遠方から駆けつけてくださった方々、この長い法廷闘争の間、私の家族を支えてくださった皆様に心から感謝します。今日、皆さんと直接お会いできたらどんなに良かったでしょう。
ラング判事、本件を最後まで審理してくださりありがとうございます。延期により娘さんの春休みと重なったにもかかわらず、時間を割いていただき感謝いたします。また多くの方々が書いてくださった被害者等意見陳述にもすべて目を通していただき、一つひとつの陳述が私とそれぞれの方との思い出の断片を示してくれています。
私を撃ったガブリエル・ホルカシタスさん、あの日あのような状況で私たちが出会ってしまったことは本当に残念です。別の人生であれば、私たちは友達になれていたかもしれません。私は「赦し」と、そして赦しを与えてくださる神様を信じています。今も変わりません。
家族へ、そしてこれまで出会ったすべての人たちへ。本当に素晴らしい人生でした。皆さんと過ごした時間はどれも本当に楽しかったです。人がどれだけ長く生きられるかは誰にもわからないからこそ、お互いに愛し合ってください。一日一日を大切に、生きてください。途中でつまずいてしまっても大丈夫。神様があなたを支えてくれます。年齢を重ねられるということ自体、誰もが得られるわけではない贈り物です。だからどうか年を取ることを恐れずに、シワなんて気にしないでください。
以前、スマホのアプリで自分の顔を年老いた姿に変えるフィルターを試したことがあります。何年も前にいとこにも見せました。「もし年を取る機会があったら、自分は将来こんなふうになっていたのかな?」と想像するのに最高の写真でした。
今日ここに来てくださり、本当にありがとう。皆さんが想像している以上に、大きな意味を持っています。さて…これから釣りに出かけます。みんな、大好きだよ。また“向こう側”で会いましょうね。
映像が終わると、法廷内には言葉を失ったような静けさがしばらく続きました。
トッド・ラング判事は「I loved that AI. Thank you」と述べ、映像からクリスさんの “赦し” が伝わってきたと語りました。
遺族の多くは目に涙を浮かべて傍聴席で寄り添う様子がみられました。
こうして“AIによる死亡してしまった被害者のスピーチ”という米国初の試みは終わりました。