「親しかった仲間の死」に対してサルは何を思うのか
私たち人間は、誰かの死に直面したとき、様々な反応をします。
親しい友や近親者の死に対しては、強い悲しみを感じたり、遺体に寄り添ったりするなど、特別な感情や行動が観察されます。
このような「死生観」は人間特有のものとされてきましたが、果たしてそうでしょうか?
家族単位で行動し、仲間との関係性を築き、毛づくろいなどで親和性を高めるなど、複雑な社会構造を持っています。
そのようなサルたちは、仲間の死にどのように反応するのでしょうか?

大阪大学の研究グループは、1958年から岡山県真庭市「神庭の滝」周辺に生息する「勝山ニホンザル集団」に対して、67年にわたり調査してきました。
サルの名前を覚え、名前を付けて、それぞれの行動を観察してきたのです。
そして1990年からは「サル同士の親しい関係」を調べることも行っています。
サルたちが毛づくろいしたり一緒に過ごしたりする相手を定量的に記録してきたのです。
この長期調査の過程で、死亡直前あるいは死亡直後の4頭のサルに対して、仲間のサルたちがどのように行動するかを詳細に記録することに成功しました。
これまで、母親ザルが死亡した子ザルを持ち運ぶことはよく知られていましたが、おとなの遺体に対してサルたちがどんな反応を示すかは情報がありませんでした。
今回の長期調査は、こうした点で新しい発見をもたらしています。
では、サルたちの間で仲間の死はどのように映ったのでしょうか。