地球の“赤ん坊時代”を読み解くタイムマシン
では、これらの古代岩石がなぜ重要なのでしょうか?
現在の地球の地表や地殻は、常にプレートの運動や浸食などで変化し続けています。
そのため、地球が誕生したばかりの頃の痕跡は、ほとんどが消え去ってしまいました。
そんな中で、ヌヴヴアギトゥク帯の岩石のように冥王代の名残が地表に残されている例は極めてまれです。
こうした太古の岩石は、地球がどのように冷え、最初期の大陸を形成し、生命の起源につながる環境を整えていったのかを知るための貴重な情報源となります。
研究を主導したオタワ大学のジョナサン・オニール准教授は、次のように語っています。
「これらの岩石を調べることは、地球の誕生そのものに立ち返ることです。生命が誕生し得る環境が、どのように形作られていったのかを理解する手がかりとなるのです」

また、このような研究は地球だけにとどまらず、銀河系内で生命が誕生しうる“似た惑星”を探すヒントにもなるといいます。
私たちが立っているこの大地は、いったいどのようにして形づくられ、何を経て今に至ったのでしょうか。
それを知るための手がかりが、凍てつくカナダの北端に眠っていました。
地球がまだ灼熱のマグマの海に覆われていた時代。その頃に生まれた岩石が今、私たちの手の中にあります。
この発見は、地球と生命の始まりに迫る新たな扉を開いてくれるでしょう。