惑星は「引き裂かれる運命」にある
TOI-2431 bは、単に暑くて過酷なだけの惑星ではありません。
まさに“崩壊へのカウントダウン”が進行中の天体でもあるのです。
この惑星の軌道は「ロッシュ限界(Roche limit)」と呼ばれる危険領域にかなり接近しています。
ロッシュ限界とは、ある天体が恒星や巨大惑星に近づきすぎると、重力の差によって引き裂かれてしまう境界のことです。
研究者によると、TOI-2431 bの現在の軌道周期は、ロッシュ限界のわずか1.3倍程度。
これは約3,100万年以内に恒星に呑み込まれて消滅するという計算結果を意味しています。
宇宙規模で見れば、それはほんの一瞬にすぎません。
また恒星の強大な重力の影響で、惑星の形も歪んでおり、まるで粘土を引き延ばしたような姿になっているようです。
このような極限状態にあるTOI-2431 bは、単なる「珍しい惑星」ではなく、極端な物理現象をリアルタイムで観測できる“宇宙実験室”としても注目されています。

TOI-2431 bのような惑星は、一見すると遠く離れた関係のない存在に思えるかもしれません。
生命の気配もなければ、未来の移住先になる可能性も皆無です。
しかし、こうした「過酷すぎる世界」こそが、地球の特異性と奇跡を浮き彫りにしてくれます。
私たちは、溶岩地獄でもなければ引き裂かれる運命でもない、ちょうどよい距離と温度をもった地球に偶然生まれました。
それは宇宙全体から見れば、ほとんど“奇跡”のような偶然の積み重ねです。
死のスパイラルに落ちていくTOI-2431 bの存在は、地球とそこに息づく命の尊さを、私たちに改めて気づかせてくれるのです。
科学が宇宙の過酷さを暴くほどに、私たちは「いま、ここにある命の重さ」に思いをはせることになるのかもしれません。
公転速度早すぎ…。
宇宙を知れば知るほど、いかに地球が奇跡の星で、人類のような知的生命体が存在する今が奇跡を超えた尊いことなのだと実感します。