・ウミガラスの卵が尖った形をしているのは、崖の上でも転がらないようにするためであることが判明
・ウミガラスは海に近い傾斜の大きな岩棚の上で繁殖するため、卵の形が尖っている方が崖から転がり落ちにくい
・ウミガラスの卵は美しく、かつてコレクターによって収集、販売されていた
ウミガラスの卵は、他の鳥には見られないほどに「尖った形」をしています。
生物学者たちは長きにわたってその理由を調査していましたが、シェフィールド大学のティム・バークヘッド教授らが、ついにその形状の謎を解明することに成功しました。
http://www.bioone.org/doi/10.1642/AUK-18-38.1
ウェールズのスコマー島に生息するウミガラス、ニシツノメドリ、オオハシウミガラスの行動を長年にわたって研究していたバークヘッド教授。ついにその研究が実り、ウミガラスの卵の形が、崖の上を「転がりにくい」ように進化してきたことを発見しました。
ウミガラスは、海に近い傾斜の大きな岩棚の上で繁殖することで知られています。そのため、卵の形が尖っているほうが崖から転がり落ちにくいのです。
これまでの研究では、ウミガラスの卵は転がる際に「弧」を描くようにすることで、崖から落下しにくいように尖った形をしているのだと考えられてきました。
しかし、バークヘッド教授は、尖った卵を転がした際の軌跡は思いのほか大きな「弧」を描き、むしろ崖から落下しやすくなるので、この仮説では説明がつかないと考え、むしろ、そもそも「転がらないために卵は尖っている」ことを示したのです。
ちなみにウミガラスの卵は、鳥の中でも「格別に美しい卵」として広く知られています。現在は収集を禁じられていますが、かつて卵コレクターたちは、国中の崖に登ってウミガラスの卵を集めては、博物館や裕福な「マニア」に販売していたほどだといいます。
研究費の削減で調査継続の危機?

バークヘッド教授は、スコマー島の海鳥の行動をおよそ50年にもわたって研究してきた、英国でもっとも著名な海鳥の研究者の一人です。今年の終わりには引退を予定しており、自らの研究を、次世代の研究者たちに引き継ごうとしています。
しかし、ウェールズ政府が行う研究費の削減により、バークヘッド教授の研究は永遠に失われてしまう危険にさらされています。そこで現在、教授の研究を継続していくことを支援するための募金活動が行なわれています。海の健康状態を把握する上でも重要とされる、この研究の火が途絶えないことを祈るばかりです。
via: phys.org / translated & text by まりえってぃ