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脊髄が性交時の腰振りや射精後の賢者タイムも生み出していた (2/2)

2025.09.28 21:00:50 Sunday

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「腰振りのリズム」から「賢者タイム」まで脊髄の働きだった

研究チームが光を当ててガラニン陽性ニューロンを刺激すると、球海綿体筋(BSM)がリズミカルに収縮し、その活動は交尾中のマウスの腰振り動作と同期していました。

さらに、これらのニューロンを破壊したマウスでは、交尾の腰突きのパターンが乱れたり、射精までにかかる時間が大きく変化しました。

つまり脊髄は『射精スイッチ』ではなく、性行動の“段取り”を形作る重要な調整役でもあったのです。

これは性交時の腰を振る動作が、脳で考えて行っているだけではなく、一種の反射運動が支えている可能性を示します。

そう言われると、初心者は腰の動きがぎこちなかったり、明らかに脳で考えて行っているように見える点が疑問になってきますが、要は呼吸と同じで意識的にも無意識的にも行える動作と考えると理解しやすいでしょう。

緊張すると私たちは呼吸が乱れたり、上手く息ができなくなることがありますが、慣れないうちは性交時に緊張して腰の動きが上手く行かないというのはこれと似たような問題と捉えることができます。

また研究者たちは同じ脊髄ニューロンを繰り返し刺激する実験も行いました。

すると、最初は強い反応を示していたBSMの活動が、刺激を重ねるごとに弱まっていったのです。特に射精後のマウスでは、この反応が著しく小さくなっていました。

これは射精後に性的な刺激に対して体が反応しにくくなる、不応期(いわゆる賢者タイム)に脊髄が関連している可能性を示唆しています。

これは、射精後に性的な刺激に対して体が反応しにくくなる「不応期(いわゆる賢者タイム)」に、脊髄の回路が関わっていることを示しています。

人間の賢者タイムでは、脳内ホルモンの変化によって性的な興味そのものが薄れると考えられています。ただこのとき性的なものに興味が薄れるだけでなく、体も性的な刺激に反応しづらくなります。今回の結果は、この「体が性的な刺激に反応しにくくなる」という現象を、脊髄の仕組みが生み出している可能性を示すものです。

もちろん、性行動は脊髄だけで完結しているわけではありません。

通常は脳からの信号が脊髄の回路を抑え込んでおり、例えば「まだ射精するな」というブレーキを掛けることができます。

これは熱い物に触れたとき思わず手を引っ込める、かゆい場所があったとき無意識にひっかくという脊髄反射による動作を、意志の力で抑え込めるのと同様です。

この結果は、性行動の基本的な動作や反応は脊髄が担っており、呼吸などと同様に脳が意識的に制御することも可能なことで性交が成立している可能性を示しています。

今回の成果は、性行動を理解する新しい視点を提供します。

例えば不応期が短い、俗に言う絶倫のような人がなぜいるのかという疑問も、脊髄の機能から説明できるようになるかもしれません。

また人間にとっても身近な勃起不全(ED)、早漏といった性機能の悩みを理解し、治療するための重要な手がかりになる可能性もあります。

ただし、この研究はまだマウスを対象にした基礎研究の段階であり、現時点では人間に直接あてはめることはできません。

今後は性交中の脊髄ニューロンの活動をリアルタイムで記録する研究や、人間に対応する仕組みを探る研究が求められます。

これまで「脳がすべてを仕切っている」と思われてきた性行動。

しかし実際には、脊髄が腰振りのリズムから射精後の休息にまで関わっていました。

今回の発見は、長年の謎だった「性に関するさまざまな疑問」に光を当てるものです。

性をめぐる科学の探究は、まだまだ奥深い広がりを見せているのです。

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