意外な結果「自転車の方が8倍危ない?」
今回の調査では、電動キックボードで686件、電動アシスト自転車で35件の事故が報告されていました。この数字だけを見ると電動キックボードの方がかなり危険そうに思えます。
しかし論文が「10万回の利用あたり」「1,000時間あたり」「1万kmあたり」などの統一したデータで事故率で公平に比較した結果、利用回数を基準にすると、電動アシスト自転車の事故率は電動キックボードの約5倍となったのです。
さらに走行距離を基準にすると、電動アシスト自転車の事故率は約8.3倍、走行時間を基準にしても約4.8倍と、いずれも電動アシスト自転車の方が事故率がずっと高い傾向が示されたのです。
つまり、単純な件数比較では利用者が以上に多い電動キックボードの事故件数が非常に多くなるため、「電動キックボードという乗り物は危ない」ように見えますが、同条件の事故件数を比較すると、むしろ事故を起こしやすい乗り物は電動アシスト自転車の方だったのです。
これまで「電動キックボードは危ない」というイメージが強調されてきましたが、今回のデータは必ずしもそれを裏づけるものではありませんでした。
研究者たちは、電動アシスト自転車の方が事故率が高く出た背景として、いくつかの要因を指摘しています。
まず、レンタル用の電動アシスト自転車は車体が重く、ブレーキや取り回しが難しいため、慣れていない人にとって操作性が低い可能性があります。さらに、観光客など普段あまり自転車に乗らない人が利用するケースも多く、土地勘のなさ、経験不足が事故につながると考えられます。
一方で、今回の調査は、怪我を伴う事故報告に限定されているため、軽いケガやヒヤリとした場面が見落とされている可能性も残ります。
もちろん利用者が多いために事故件数が多いという問題自体が無視できるわけではありません。人気が高く利用者が集まっている乗り物に対する警戒や、厳格なルール作りは、引き続き必要になるでしょう。
ただ重要なのは、これまで広まっていた「電動キックボードだから危ない」という考え方は、データの取り方や比較の条件の違いによる思い込みだったかもしれない、という点です。
実際は電動アシスト自転車の方が、レンタル利用者が事故を起こしやすいという事実は、周知されるべきであり注意を呼びかける必要がある問題でしょう。
報告の精度を上げるためには今後は、さらに多くの都市や国で同様の調査を行い、データを積み重ねる必要がありますが、そうした取り組みを通じて、都市交通政策やマイクロモビリティの安全対策をより高いものにしていけるでしょう。
日本でも電動キックボードの事故は大きく報じられていますが、今回の調査は「どちらが危険か」を決めつける前に、データの取り方を工夫することが欠かせないと教えてくれます。
電動キックボードに関しては利用者の多さから実際に事故件数が伸びているため、電動キックボードが危険というイメージが偏見であるとは言いません。しかし利用者が少ないために、電動キックボードの影に隠れてより事故を起こしやすい乗り物が見落とされてしまうとなると問題があります。
「電動アシスト自転車だから大丈夫だろう」というような注意点の見落としを避けるためにも、今回のような比較は重要となるでしょう。
乗り物を自ら運転するときは、その危険性を利用者が正しく理解することは欠かせないことです。自転車なら大丈夫、という安易な考え方はしないように注意しましょう。