気候変動の「最後の未知数」、目覚めた微生物がもたらす未来
なぜこの発見が、世界中の気候学者たちを震撼させているのでしょうか?
それは永久凍土の中に膨大な量の有機物と炭素が“閉じ込められている”からです。
人類の化石燃料依存や地球温暖化が進むと、永久凍土が急速に融解し始め、そこに眠っていた微生物たちが目覚め、活動を開始します。
すると、彼らは閉じ込められていた動植物の遺骸や有機物を分解し、二酸化炭素やメタンといった温室効果ガスとして一気に大気中に放出してしまうのです。
しかも、実験結果からはすぐにガスが放出されるわけではなく、解凍後に微生物の活動が本格化するまでに数カ月のタイムラグが生じることも分かりました。
この遅れがあることで、例えば「北極圏の夏」が長く続く年には、秋や春まで微生物活動が持続し、予想以上の温室効果ガス排出が起こるリスクが高まります。
同チームのセバスチャン・コップ教授は「これは気候変動の反応における最大の未知数のひとつです」と述べています。
いま、アラスカやシベリアをはじめとする北方の永久凍土地帯で、同じ現象が世界規模で進行する可能性があるのです。
科学者たちは、世界中に広がる永久凍土の「ほんの一部」しかサンプル調査できておらず、目覚めた微生物がどんなふうに気候や生態系に影響するのか、まだ多くの謎が残されています。