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感謝の気持ちがあると、2人の脳は同期する / Credit:Canva
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「感謝」が2人の脳を同期し”チームプレイを促進する”と判明 (2/2)

2025.11.21 06:30:16 Friday

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感謝が引き出す「見えない力」とは?

感謝グループだけが協力を維持できた背景には、感謝の感情が相手への信頼を高め、「この関係を続けたい」という気持ちを強くする作用があると考えられます。

その結果、多少の利己的な行動が見えても、すぐに関係を切らずに協力を続けやすくなるのです。

こうした心理的な働きは、活動の同期というかたちで可視化されました。

前頭前野は相手の意図や視点を読み取り、自分の行動を調整する役割を担う領域ですが、感謝を感じているペアではこの領域の活動が特に強く同期していました。

これは、相手の考えや動きを読み取るための準備が整い、2人が同じ方向へ向きやすい、いわば“協力しやすいモード”が脳レベルで生じている可能性を示しています。

さらに、同時ボタン押しの課題では、協力がうまくいっているペアほど脳の同期も高いという関係が見られ、行動と脳の状態が歩調を合わせながら協力を支えていることが示唆されました。

つまり、感謝は相手への信頼感を高め、その信頼感が「一緒にがんばろう」という姿勢と、相手に合わせて自分の行動を微調整する力を引き出し、その結果として脳のリズムまでそろっていく、と考えられるのです。

ただし、この研究にはいくつかの注意点があります。

参加者は若い女性のみであり、男性や年齢の異なるペアで同じ結果が得られるかはまだ明らかではありません。

また、協力ゲームは単純化された実験課題であり、現実の友人関係や職場のような複雑な状況と同じとは限りません。

文化的背景も限定されているため、感謝の影響が文化間でどのように変化するかについても検証が必要でしょう。

研究者たちは、今後は男女混合や年齢差のあるペア、複数人のグループを対象とした研究によって、感謝が協力行動に与える影響をより広い文脈で調べられると期待しています。

また、感謝が欠如している状況が協力関係をどのように損なうのかという逆方向の研究も、社会的な応用に向けて重要なテーマになるはずです。

“ありがとう”という一言が、人間同士を結びつける見えないリズムを生み出しているのだとすれば、感謝の力は私たちが思っている以上に大きな意味を持っているのかもしれません。

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