「歩きながら入国審査」の安全面と運用上の利点
シームレス・コリドーの技術は2001年から生体認証企業ビジョン・ボックスが研究を進めてきたものです。
歩きながらでも正確に顔を見分けられるようになったことが大きな進歩といえます。
そして2024年にアマデウス社がビジョン・ボックスを買収。今回の空港への導入へと至りました。
非常に便利な新システムに思えますが、私たちは安心して活用できるでしょうか。
アマデウスのレポートによると、こうしたバイオメトリクス技術を安全に運用するための前提として、個人情報を一か所の巨大なサーバーに集めず、デジタルウォレットやアプリごとに分けて管理する「分散型のアイデンティティ管理」を重視しているようです。
情報はデジタルウォレットやアプリ内部に保存し、必要な時だけ暗号化された状態で一時的に共有して照合するという仕組みを想定。
利用者が自分の情報をいつどこで使うかをある程度コントロールできる点が強みとされています。
このような考え方により、プライバシー保護と利便性の両立を目指していることがうかがえます。
また運用面でも利点があります。
入国審査官は行列管理や書類確認から解放され、サポートが必要な旅客の支援に集中できるようになります。
これは、特に身体の不自由な旅行者や高齢者のサポートにつなげることができ、空港全体のサービス品質を向上させる効果があります。
そして、旅客心理の面でも、シームレス・コリドーの導入が不安軽減につながる可能性が指摘されています。
アマデウスが2025年に行った調査では、世界の旅行者の90%が旅のどこかで不安を感じており、そのうち約4分の1が空港の保安検査を最大の不安要因として挙げています。
書類の記入ミスや言語の壁、対面での審査に対する緊張など、心理的な負担は小さくありません。
歩くだけで入国できるシームレス・コリドーは、こうした旅客の不安を大きく減らすと期待されています。
このように、シームレス・コリドーは、国境通過の在り方を根本的に変える可能性を持っています。
インドネシアでの導入は、航空業界や政府機関にとっても新しい国境管理モデルを示す実例となり、今後ほかの国にも波及する可能性があります。























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