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Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部
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ゾウの腸内で作られるコーヒー豆「ブラック・アイボリー」、風味の秘密を解明

2025.12.01 17:00:21 Monday

アジアゾウの腸内発酵を経て生産される希少なコーヒー豆「ブラック・アイボリー」

その風味は苦味が弱く、独特のまろやかさと香りを生み出すことが知られています。

しかし、そうした独特の風味がどのように生まれるのかは、長らく科学的に謎のままでした。

今回、東京科学大学(Science Tokyo)の研究チームは、ゾウの腸内で働く“微生物”に注目し、独特の風味を生み出すメカニズムの一端を初めて明らかにしました。

「ゾウが作るコーヒー」は、動物と微生物と植物が絡み合う、思いがけない発酵の世界だったのです。

研究の詳細は2025年11月18日付で科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されています。

ゾウの腸内細菌がコーヒー豆を発酵し味を変える可能性 https://www.isct.ac.jp/ja/news/29vpx49wefch
Preliminary study of gut microbiome influence on black Ivory coffee fermentation in Asian elephants https://doi.org/10.1038/s41598-025-24196-0

アジアゾウの腸内で発酵させるコーヒー豆とは?

コーヒーは、豆の種類や焙煎だけでなく、「加工工程」によって味が大きく変化する飲み物です。

果肉を洗って処理するウォッシュト、自然乾燥するナチュラルといった製法が知られていますが、なかには動物の消化管を通過する特殊なタイプもあります。

その代表例が、インドネシアの「コピ・ルアク」です。

これはジャコウネコの腸内を通過することで、豆表面の成分が分解され、独特の柔らかな風味が生まれるとされてきました。

そしてタイ北部の一部農園で生産される「ブラック・アイボリー」も同様に、アジアゾウが食べたコーヒーチェリーの“ふん”から採取されます。

ただし、その味がどのような化学変化で生まれているのかは、これまで科学的に検証されていませんでした。

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ブラック・アイボリーの豆/ Credit: ja.wikipedia

研究チームは、過去にコピ・ルアクを対象にジャコウネコの腸内細菌を解析し、特定の細菌が豆表層の成分を分解する可能性を見いだしていました。

この知見を踏まえ、「ゾウでも同じ現象が起きているのではないか」という疑問が生まれます。

さらに近年、腸内微生物が食品の発酵や香り成分の変化に大きく関わることが明らかになりつつあり、「動物の腸内で発酵が起き、味の変化を生む」という視点が注目されはじめていました。

アジアゾウは草食性で、植物細胞壁を分解する能力をもつ微生物と共生していることも知られています。

この点から、チームは「ゾウの腸内環境は、コーヒー豆の成分を変化させるのに適しているのではないか」と考えました。

こうした背景のもと、アジアゾウがコーヒーチェリーを食べた後のふんを採取し、腸内細菌の種類や働きを分析することに。

目的は、ゾウ特有の腸内微生物がコーヒーの味わいに与える影響を科学的に突き止めることでした。

次ページ研究成果と社会的インパクト

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