研究成果と社会的インパクト
分析の結果、ブラック・アイボリーを生み出すゾウの腸からは、通常のゾウとは大きく異なる微生物の構成が見つかりました。
特にアシネトバクターなどの細菌が有意に増えており、これらはコーヒー豆の表面にも存在し、ペクチンと呼ばれる植物成分の分解に関与することが知られています。
さらに遺伝子解析により、ゾウの腸内細菌が、ペクチンやセルロースを分解するための酵素遺伝子を多数保持していることが判明。
ペクチンはコーヒー豆の外層に多く含まれる成分で、苦味や雑味に影響することが知られています。
【アジアゾウの腸内発酵で生産されるコーヒー豆の図解がこちら】
また、先行研究では、コーヒーを加熱した際に生じる揮発成分「2-フルフリルフラン」が、ゾウの消化管を通った豆では減少することが分かっています。
この化合物は焦げや苦味に関連することから、腸内微生物によるペクチン分解がこの成分の減少につながっている可能性が高いとチームは指摘しています。
これらの結果が示すのは「ゾウの腸内細菌がコーヒー豆を発酵させ、その化学組成を変化させている」ということです。
つまり、ブラック・アイボリーの“まろやかな風味”は、ゾウの巨大な消化器官と、その中で働く微生物の発酵作用が生み出した自然のプロセスなのです。
微生物による発酵は、味噌やチーズなど人間の食文化でも重要な役割を果たしていますが、その発酵の場が「動物の腸内」であるという点は非常にユニークです。
チームは、こうしたメカニズムを分子レベルで理解することで、食品科学や発酵研究に新しい方向性が生まれると期待しています。
「どんな味がするのか飲んでみたい」と思う方はたくさんいるでしょうが、残念なことに、ブラック・アイボリーは値段が非常に高いため、気軽には手を出せなさそうです。
























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