人間の脳はチンパンジーの叫びを「人の声」のように扱っていた
人間の脳はチンパンジーの叫びを「人の声」のように扱っていた / Credit:Canva
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人間の脳はチンパンジーの叫びを「人の声」のように扱っていた (2/3)

2025.12.05 20:00:19 Friday

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チンパンジーの叫びだけが人の「声エリア」を揺さぶる

チンパンジーの叫びだけが人の「声エリア」を揺さぶる
チンパンジーの叫びだけが人の「声エリア」を揺さぶる / Credit:Canva

スイス・ジュネーブ大学の研究チームは、人間の被験者がチンパンジーの声にどのように反応するかを詳しく調べるため実験を行いました。

被験者となった23名の成人はMRIスキャナーに横たわり、ヘッドフォン越しに様々な鳴き声を聞かされます。

用意された音声は全部で4種類で、人間の話し声(対照群)とチンパンジー、ボノボ、アカゲザル(マカク属のサル)の鳴き声でした。

被験者は事前に各動物の鳴き声を少し学習した上で、一つ一つの音声刺激について「どの種の声か」を推測しながら聞くよう求められました。

同時に全体の活動がfMRIで記録され、特に聴覚野の反応に注目して解析が行われました。

研究チームの狙いは、人間の声エリア内に「霊長類の声に特に反応するサブ領域」が存在するかどうかを確かめることでした。

結果、人間の側頭葉にある上側頭回(じょうそくとうかい)という領域がチンパンジーの声を聞いたときに顕著に活性化することが観察されました。

この上側頭回はまさに声エリアに相当する場所で、人間では言語や音楽、感情のこもった声などを処理する重要な音響野です。

一方でボノボやマカク(アカゲザル)の声にはあまり強く反応しないことが示されました。

では、この結果は単に「チンパンジーの声が人間の声に音質が似ているから」でしょうか。

例えばボノボの声はチンパンジーよりも高音ですが、その違い(声の高さや大きさ)が原因で脳の反応に差が出た可能性も考えられます。

そこで研究チームは、鳴き声ごとの基本的な音響パラメータを統計モデルで補正し、純粋に「種の違い」による脳活動を抽出する追加解析を行いました。

簡単にいえば、「音の高さと音量の違い」を差し引いて比較し直したのです。

結果は、それでもチンパンジーの声に対する強い反応は補正後も依然として残存し、声エリア内で有意な活動として検出され続けました。

対照的に、ボノボの声では補正を施してもやはり特筆すべき反応は現れませんでした。

この事実は重要です。

なぜなら、脳がチンパンジーの声に示した特別な反応は単なる「周波数帯の近さ」だけでは説明できず、より複雑なパターンに対する敏感さが関与していることを示すからです。

例えるなら、まるでラジオのチューナーが特定の周波数に合うと放送をはっきりと受信できるように、人間の脳も「自分たちの声に近いパターン」の音であれば信号を拾いやすいのかもしれません。

チンパンジーの叫び声には、人間の脳が進化の中で「聞き慣れたパターン」として反応しやすい特徴が含まれている可能性があります。

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