電気で水を動かし、ダンスで情報を伝える
新しいロボットは、体をしならせたり、脚を動かしたりしません。
代わりに、周囲の溶液中に電場を発生させます。
この電場がイオンを押し動かし、さらにそのイオンが水分子を動かすことで、ロボットの周囲に流れが生まれます。
その結果、ロボットはまるで流れる川に乗るように前進します。
しかも電場を調整することで、単独で動くだけでなく、魚の群れのように協調して移動することも可能です。
さらに驚くべきは、このサイズの中に本物のコンピューターが搭載されている点です。
プロセッサー、メモリ、センサー、太陽電池がすべて1チップに収められています。
ミシガン大学のデビッド・ブラウ(David Blaauw)教授のチームは、出力わずか75ナノワットという極限的な電力条件でも動作する超低消費電力回路を設計しました。
これはスマートウォッチの消費電力の10万分の1以下です。
ロボットは摂氏約0.3度の精度で温度を感知できます。
そして測定結果は、無線通信ではなく、小さな「ダンス」として外部に伝えられます。
ロボットの動きのくねり方に情報を符号化し、研究者は顕微鏡とカメラでそれを読み取ります。
この方法は、ミツバチがダンスで情報を共有する仕組みに着想を得たものです。
ロボット工学は「見えない世界」へ踏み出した
チームは、この成果をゴールではなく「出発点」だと位置づけています。
将来的には、より多くのセンサーを搭載し、より複雑なプログラムを実行し、過酷な環境で動作するマイクロロボットが生まれる可能性があります。
ミスキン氏は、「ほとんど目に見えないほど小さな存在の中に、脳とセンサーとモーターを入れ、それが数か月動き続けることを示した」と語っています。
この基盤があれば、そこに知能や役割を積み重ねていくことができます。
塩の粒ほどのロボットは、医学や製造技術だけでなく、ロボット工学そのもののスケール感を塗り替える存在になりそうです。





























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