合成意識を目指すなら、どこから作り替えるべきか / 図は、「もし人工的に“意識っぽい計算”をやらせるなら、どんなふうにシステムを組めばいいか」を描いた設計図の地図です。いちばん下の層には、水やゲル、イオン(電気を運ぶ粒)などが実際に動くような、“生き物っぽい”基盤があります。ここでは電気や濃度がなめらかに変化し、その動きが「代謝」や「エネルギーの制約」を受けながら、現実の時間スケールで進んでいきます。つまり、スタート地点は「コード」ではなく、「どういう物質が、どういうルールでゆらめき動いているか」です。 そこから少し上の階層に行くと、その連続的なゆらぎの中から、「スパイク」や「オン/オフ」などの離散的な出来事が顔を出します。たとえば、ある強さ以上の刺激が入ったときだけニューロンが一気に発火する、といった“カチッと切り替わる反応”です。この中間層では、そうした離散的な反応と、周囲に広がる連続的な電場や濃度の場がセットになって、一つのハイブリッドな計算が行われているイメージが描かれています。場のなめらかな動きが「どこでスパイクが出やすいか」を決め、そのスパイクの集まりがまた場を作り直す、という相互作用です。 さらに上の巨視的なレベルでは、脳全体に相当するような大きな領域同士の相互作用が描かれています。ここでは、離れた領域がリズムをそろえたり、ゆっくりした波のような活動が全体に広がったりして、「ネットワークとしてのまとまり」が立ち上がります。図では、この一番上に「情報理論的な指標」など、マルチスケールの活動をまとめて評価する“意識の指標候補”が置かれていて、下から上までの多層の動きがうまく閉じているかどうかを見るメーターのような役割を果たします。Credit:On biological and artificial consciousness: A case for biological computationalism